本書の中では「公共性論ないしコミュニタリアン的な自己犠牲の場でもないし、また前近代的な人格依存の世界でもない」場として「コモンズ」というものを措定し、各自の専門に基づき、入会・地方都市の商店街・住宅・先住民の保留地・政党・宇宙、そしてミートボール(?)などという具体的な事象を通じてコモンズのありようが議論されているのであった。
わが国において所謂「公共性論」を正面から謳ったものの嚆矢は、2000年に刊行された齋藤純一による『公共性』(岩波書店 思考のフロンティアシリーズの1冊)であったと記憶している。しかし、いつの間にか、それから20年近くの歳月が流れているのであった。この20世紀最末尾の頃と現代とを比較するなら、我々の政治と社会を長らく規定してきたリベラリズムやデモクラシーの状況も著しく変化しており、その点でも改めてメタな観点から「公共性を超えた」議論が必要とされるのではないかと思われるのである。
それ自体ひとつの「知のコモンズ」を作り出そうとする営みであった待鳥研の実験的著作である本書『社会のなかのコモンズ』を、来たる2020年代へ向けての〈メタ公共性論〉の先駆けとして手に取って頂ければ幸いである。
谷口 功一(たにぐち こういち)
首都大学東京法学部教授
コモンズ研究会メンバー
vol.101
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