別冊『アステイオン』

2017/11月発売

アステイオン創刊30周年ベスト論文選 1986-2016 冷戦後の世界と平成

山崎 正和、 田所 昌幸[監修]
  • 2017/11発売
  • ISBN978-4-484-17213-2 C0030
  • A5判・並製/2736ページ(全5巻)

日本を代表する論者たちは冷戦後の世界と平成日本をどのように見て、どのように論じてきたのか。世界では冷戦、国内では昭和の終焉を迎えつつあった1986年に創刊された論壇誌『アステイオン』。冷戦後の世界情勢の変化によって日本の国際的地位・役割が変わり、国内でもバブル経済崩壊によって産業や雇用・労働問題、そして少子高齢化問題から労働力、年金問題など「先進国病」を世界で一番はじめに経験した。平成日本は社会と構造に大変革を求められた時代でもあった。一歩引いたスタンスで長期的な視野をもって議論する場を提供してきた『アステイオン』は、激動の平成、そして世界における日本の役割をどのように論じてきたのか。時代と社会がさらに複雑化し、羅針盤が見えなくなる今こそ、先人たちが残した『アステイオン』での議論と歴史に学べるヒントがある。

目次

【第I巻 政治・経済 国際編】

  • 粗野な正義観と力の時代高坂正堯
  • イスラムの友から岡崎久彦
  • 脱工業化イデオロギーの終焉永井陽之助
  • イギリスの知恵と「悪知恵」中西輝政
  • アメリカの底力を探る――文明衰亡史観を排す猪木武徳
  • ホメイニーとゴルバチョフ――イスラム革命とソ連山内昌之
  • 国家史から国際史へ入江 昭
  • 知識人の決闘――サルトルとアロンダニエル・ベル
  • 「一九八九年革命」の宴のあとでラルフ・ダーレンドルフ
  • 涙の谷をこえて――東欧の「ヨーロッパ」への回帰北岡伸一+
    竹中平蔵+
    三浦雅士
  • 西洋的伝統――その普遍性と限界長尾龍一
  • アメリカニズムの終焉――リベラリズムとデモクラシーの葛藤佐伯啓思
  • 統合の夢を醒ますもの猪木武徳
  • アジア・ジレンマ青木 保
  • 文化の多様性と二つの資本主義――ゲマインシャフト・キャピタリズムの提唱富永健一
  • イスラムとアメリカ――自由と民主主義をめぐる非対称山内昌之
  • 現代ヨーロッパをどう読むか――「文化的多様性」をめぐって梶田孝道
  • F・D・ルーズベルトの登場――アパシィに根ざした政治福田和也
  • 文明の衝突か、相互学習か――冷戦後の世界秩序を展望して佐藤誠三郎
  • ケインズ再考――20世紀経済の特質を考える松原隆一郎
  • 逆説の現代史下斗米伸夫
  • グローバリゼーションの逆説――二一世紀の国家像を求めて猪木武徳
  • テロリズムとの戦い――「戦後思想」をいかに構築すべきか田中明彦
  • 政権の反米、人々の反米――イラクとアラブ諸国の対米感情をめぐって酒井啓子
  • アンビバレントな関係――英米関係の百年と歴史の教訓細谷雄一
  • 「共通敵」のない時代川島 真
  • 東南アジアからみた中国の台頭白石 隆
  • 中国の未来――「平和的発展」は続くのか高原明生
  • アメリカの政治家はどう育てられているか久保文明
  • トルコのEU加盟――EUにとっての一つの試金石鈴木 董
  • 「アメリカ帝国」に同盟は必要かデーヴィッド・A・ウェルチ
  • ネオコンは終わったかマーク・リラ
  • 最後にして最善の希望?阿川尚之
  • 帝国の磁力土屋大洋
  • イデオロギーと統治の間で待鳥聡史
  • 「砂社会」ロシアの復活袴田茂樹
  • 「ヨーロッパ」は成立するかヴォルフ・レペニース
  • 新千年紀の予感――ダニエル・ベル教授インタビュー田所昌幸+
    彦谷貴子
  • 「アラブの春」がもたらしたもの池内 恵
  • 等身大の民主主義観ジョン・ダン
  • 二極化するアメリカアレクサンダー・スティル
  • 再臨、あるいは失われた可能性の時代中西 寬
  • 一九八九年に起きたことは何だったのかピエール・グロセール
  • 溶解する中東の国家、拡散する脅威池田明史
  • 清朝の崩潰と中国の近代化岡本隆司

【第II巻 政治・経済 国内編】

  • 責任国家・日本への選択中谷 巌
  • 日本はまだ「ひよわな花」かズビグネフ・ブレジンスキー+
    高坂正堯
  • 〝円〟は新基軸通貨たりうるかローレンス・クラウス
  • なぜ改めて「ライフサイクル計画」か蠟山昌一
  • ボーダーレスの経済とリーダーレスの政治本間長世
  • プロローグ 一九二六 - 一九四五高坂正堯
  • ポストモダンの選挙制度改革曽根泰教
  • 政治家は軍事を、自衛隊は政治を猪木正道
  • 転換期を迎えた日本型企業システム本間正明
  • 社有物の研究諸井 薫
  • 平成不況の核心野口悠紀雄+
    森口親司
  • 「常任理事国」日本の条件横田洋三
  • 新世界無秩序論をこえて――冷戦後の世界と日本五百旗頭 真
  • 米中が「閉鎖日本」をバイパスする可能性中谷 巌
  • 満州事変――「すでに出たものは仕方がなきにあらずや」五百旗頭 真
  • 「脱亜入欧」から「脱亜入洋」の時代へ高坂正堯+
    山崎正和
  • 日本型経済システムは21世紀も有効か島田晴雄
  • 日本はアジア太平洋時代の「接着剤(グリュー)」となれ――後退的思考を打破する時竹中平蔵
  • 安全保障感覚の欠如――日本に自分の運命は自分の責任だという意識はあるか高坂正堯
  • 二大政党制という妖怪久米郁男
  • 官僚制の生理と病理――薬害エイズとオウム教団御厨 貴
  • 明治六年の政変――明治百年の大計の誤算川勝平太
  • 市場化は改革か破壊か――日本の構造改革と市場化の論理伊藤元重
  • アジアの日本・日本のアジア青木 保+
    佐伯啓思+
    五百旗頭 真
  • どこへ行く日本経済――2極化を超えて森口親司
  • 明治維新における「王政」と「公議」――横井小楠と大久保利通を手がかりに三谷 博
  • 国家の弁証――二一世紀日本の国家と政治北岡伸一
  • 格差の拡大と機会平等の欠如――今の日本で起こっていること橘木俊詔
  • 戦後日本の憲法体制の変容と展望田所昌幸
  • 憲法を考える前に――法の権威はどこから生じるか嶋津 格
  • 日本からみた米中関係添谷芳秀
  • 人類史の転換点――世界の将来像と日本の課題中西 寬
  • 日本では政治家はなぜ育たないのか筒井清忠
  • 政党政治はなぜ、いかに生まれたか――英米および日本について三谷太一郎
  • 「市民」育成へのまなざし山室信一
  • 日本財政の現状と課題井堀利宏
  • 「大正百年」としての現在――知識人と「社会」苅部 直
  • 心地よい停滞の中の不安田所昌幸
  • 日本人にとっての「市民」中西 寬
  • 「国民的議論」とは何だったのか――原発をめぐる市民参加のあり方小林傳司
  • 現代民主政1・5――熟議と無意識の間空井 護
  • アマチュアリズムの政治と科学――日本野鳥の会の戦中・戦後史牧原 出
  • 若者にとっての「保守」と「革新」――世代で異なる政党間対立遠藤晶久+
    ウィリー・ジョウ
  • 鈍牛・哲人宰相と知識人たち――大平総理の政策研究会をめぐって宇野重規

【第III巻 日本論・日本文化論】

  • 浄土――日本的思想の鍵司馬遼太郎
  • 「国際婦人年」という黒船目黒依子
  • 井伊兄弟の幕末――幻想の黒船人質渡辺 保
  • 芸者と富士山――外国人の見た日本文化の深層佐伯順子
  • 近代・西欧・「さびし」の伝統――留学後の斎藤茂吉佐佐木幸綱
  • 陛下ご自身による「天皇論」半藤一利
  • 日本神話にみる意思決定河合隼雄
  • 「インテリ」の盛衰――昭和の知的社会山崎正和
  • 日本人にとっての「暮しよさ」とは――文化に表れる社会資本白幡洋三郎
  • 武士の変容五味文彦
  • 日本はアジアではない――クラシック・コンチネンタルズから距離をおいて梅棹忠夫
  • 勤労の倫理の系譜――二宮尊徳からスマイルズへ平川祐弘
  • 失われた〝個育て〟の機能大宅映子
  • 「二重言語国家」日本――日本文化への一試論石川九楊
  • 近代日本の時間体験――「歴史の終焉」を生きるとは坂本多加雄
  • 戦後日本とは何であったか――ジャーナリズムの視点から粕谷一希
  • 〝明るい東北〟のお地蔵様――結城登美雄の町めぐり森まゆみ
  • めざせ選択・責任・連帯の教育改革橋爪大三郎
  • 教育改革という見果てぬ夢苅谷剛彦
  • 「即戦力」の幻想玄田有史
  • 余白の美学高階秀爾
  • 「君と住む家」――美智子皇后御歌集『瀬音』芳賀 徹
  • 「聖林(ハリウッド)」に酔った日本人川本三郎
  • クール・ジャパンの繁栄と不安渡辺 靖
  • ふたつの「中国化論」――江藤淳と山本七平與那覇 潤
  • 「日本料理」への懐疑四方田犬彦
  • オリンピックと建築家藤森照信
  • 歴史の中の多様な「性」三橋順子

【第IV巻 思想・文学・社会】

  • 20世紀末の危機と希望――「市民社会(シヴィル・ソサエティー)」の復権ダニエル・ベル+
    山崎正和
  • 文明を輸出するとき伊丹敬之
  • 世紀末文明の現象学村上泰亮
  • 日本文化の世界性――柔らかい個人主義の系譜山崎正和
  • 情報の氾濫と知識の貧困――「情報」社会は「知識」社会たりうるか富永健一
  • 二十一世紀に文学は生き残るか?ソール・ベロー+ハーバート・パッシン
  • 言論、戦争、そして責任井上達夫
  • エロティックな都市?鷲田清一
  • 「文化国家」の裏と表渡辺 裕
  • 日本はみずからの来歴を語りうるか――「世界史の哲学」とその遺産坂本多加雄
  • 臨床諸学の提唱養老孟司
  • 身体としてのヨーロッパ三浦雅士
  • 強いメッセージとしての普遍主義村上陽一郎
  • 事故の連続としての歴史岩井克人+
    三浦雅士
  • 望ましい情報社会の姿とは公文俊平
  • 私的なものの場所鷲田清一
  • メディア、大衆、そして知識人西部 邁
  • 退屈に耐える精神的成熟西垣 通
  • 「新しい教養」へのヒント筒井清忠
  • 「公」と「私」のあいだ加藤秀俊
  • 自由の牢獄――リベラリズムを超えて大澤真幸
  • 世界の小説を読む――最新の話題作、問題作からパール・K・ベル
  • 現代人と宗教――無宗教としての宗教河合隼雄
  • ポストモダン再考東 浩紀
  • 規範はいかに語られうるか――自明世界の亀裂と学知盛山和夫
  • 科学論再考――現代社会における科学と平等中島秀人
  • 花の夢奥本大三郎
  • 共感の由来と未来山極寿一
  • 魂の幸福を語り合うこと張 競
  • 3・11の科学思想史的含意金森 修
  • 幸福を追求するアメリカ人――反知性主義と宗教森本あんり
  • 母語は世界言語によって磨かれる――あるチェコ語話者の回想トマーシュ・ユルコヴィッチ
  • 「報道の自由度ランキング」への違和感佐藤卓己

【総目次】

  • 総目次
  • アステイオン・グラヴィア
  • 特別企画インタビュー 「鋭く感じ、柔らかく考えてきた三十年」山崎正和+
    苅部 直
  • 特別企画 「アステイオン三十年を振り返る」
  • 世界の思潮の把握と日本からの知的発信の試み田所昌幸
  • 「ポスト冷戦期」を見届けた後池内 恵
  • 根源的な思考と時代の省察苅部 直
  • 技術至上の現代になぜ文学芸術が大切か張 競
  • 歴史の教養と外交の叡智、冷戦後世界を見通す三人の歴史家細谷雄一
  • 日本政治論の不在から、自律した政治学に基づく発信へ待鳥聡史
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