最新記事

ダークネット

やわらかな日本のインターネット

Excerpt from the Japanese Edition of "The Dark Net"

印刷

 典型的なのは、過去の失敗などネット上に拡散された不都合なデータをどのように扱うべきかという問題だろう。この問題については、2014年にEUで「忘れられる権利」を認める判断が下され、実際に不都合な情報について削除依頼があれば検索結果に表示されないようにするという取り組みが進んでいる一方で、アメリカにおいては「忘れられる権利を認めることは、知る権利の侵害につながる」という見方が強い。ここにもインターネットの「強い思想」の影響が見て取れるが、では私たちはこの問題についてどのように考えるだろうか。

 人によって見解は分かれるかもしれないが、少なくとも私たちはそこで、どのような立場の人々、どのような権利を守り、どのような自由を制限するのかを選ぶ必要がある。個人がネット上で炎上した記録を削除して欲しいと願うのと、政治家が過去の汚職の記録を検索されないようにしたいと望むのは、まったく別のレベルの話だ。しかしながらこうした出来事について法律などで規制しようとすれば、「自由はどこまで守られるべきなのか」について、明確な意志を社会で共有することになる。そのとき私たちの社会に、本書に登場するような「強い思想」の持ち主はどのくらいいるだろうか。ややもすると「いやがる人がいるなら、規制もやむを得ないのではないか」といった「やわらかな」考え方でもって、際限のない規制や監視を認めてしまうのではないか。

 インターネットは犯罪の温床であってはならないし、まして地下経済化することによって社会の治安に問題が起きることを肯定するための道具でもない。その点で、本書に登場する「ダークネット」の住人たちの振る舞いのすべてを受け入れるわけにいかないのは明らかだ。だがその背景に存在する「強い思想」にまで思いを巡らせるならば、果たして日本のインターネットは「やわらかい」ままでいいのかということもまた、考えられなければならないのではないか。

今、あなたにオススメ

最新ニュース

ワールド

ペルー大統領、フジモリ氏に恩赦 健康悪化理由に

2017.12.25

ビジネス

前場の日経平均は小反落、クリスマス休暇で動意薄

2017.12.25

ビジネス

正午のドルは113円前半、参加者少なく動意に乏しい

2017.12.25

ビジネス

中国、来年のM2伸び率目標を過去最低水準に設定へ=現地紙

2017.12.25

新着

ここまで来た AI医療

癌の早期発見で、医療AIが専門医に勝てる理由

2018.11.14
中東

それでも「アラブの春」は終わっていない

2018.11.14
日中関係

安倍首相、日中「三原則」発言のくい違いと中国側が公表した発言記録

2018.11.14
ページトップへ

本誌紹介 最新号

2024.11.26号(11/19発売)

特集:超解説 トランプ2.0

2024.11.26号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

アメリカ政治 異色の顔ぶれ満載のトランプ2.0を読む
■リスト 第2次政権のトンデモ閣僚人事、その人物像は
閣僚 問題児ゲーツを司法長官に、前代未聞の復讐劇が開幕
投資 トランプ当選に笑う業界、泣く業界
外交 片想い? 両想い? ディール外交の危険なプーチン愛
報道 大惨敗メディアに未来はあるか
ルポ 「眠れる有権者」のヒスパニックが目覚めた時
デジタル雑誌を購入
最新号の目次を見る
本誌紹介一覧へ

Recommended

MAGAZINE

特集:静かな戦争

2017-12・26号(12/19発売)

電磁パルス攻撃、音響兵器、細菌感染モスキート......。日常生活に入り込み壊滅的ダメージを与える見えない新兵器

  • 最新号の目次
  • 予約購読お申し込み
  • デジタル版

ニューストピックス

人気ランキング (ジャンル別)

  • 最新記事
  • コラム&ブログ
  • 最新ニュース