個人的に特に興味を引かれたのは、「円」についての考え方だ。たとえばジョブズがシンプルかつ手軽であることに執着したことはよく知られているが、ここではわかりやすく、そして深い解明がなされている。
iPodの、話題をよんだあの形、白い長四角にリングのある形。これは円相だ。禅僧が白い紙の上に筆で書く(描く)、丸い形。
円相は禅の境地である。宇宙でもあり、空(くう)でもある。水に映る月かもしれない。(41ページより)
一方で著者は、1950年代から60年代に活性化した日本の前衛美術運動にも言及しており、キャンバスにリングを太く大きく描いた吉原治良の作品をも話題にしている。これは文学、演劇、映画、音楽などの各分野で「前衛」がもてはやされた時代のことで、その推進者のひとりがオノ・ヨーコである。つまり、ここでまたレノンとジョブズは「つかず離れず」の接点を見せる。
もちろん、それはこじつけだと終わらせることもできるかもしれない。けれどもあながち的外れではない気がして、これらの推測はなかなか楽しい。
レノンの丸メガネは、円相と関連するのではないか。そしてジョブズもまた、晩年は丸メガネ姿だった。ここでも符牒があったわけだ(45ページより)
さて、この記述をどう受け止めるか。
なおレノンとジョブズのみならず、本書ではビートルズについてかなりのページ数が割かれており、そこにはビートルズ世代である著者の熱い思いが反映されている。その考察の深さは、ビートルマニアをも納得させることだろう。
<*下の書影画像をクリックするとAmazonのサイトに繋がります>
今、あなたにオススメ
新着
▶最新記事一覧
ここまで来た AI医療
癌の早期発見で、医療AIが専門医に勝てる理由
2018.11.14
中東
それでも「アラブの春」は終わっていない
2018.11.14
日中関係
安倍首相、日中「三原則」発言のくい違いと中国側が公表した発言記録
2018.11.14