私自身、謙虚に仕事に向き合っていたつもりでも、男性からはそんなふうに見られていたことに衝撃を受けたんです。そんなときにこの自信論争の記事を読んで驚きました。「私と同じように感じる女性がアメリカにもいるのか」と。
五百田 この本について、友人知人に話をすると、「それは本当にアメリカの話?」と聞き返されることが多かったんです。日本人から見ると、アメリカ人の多くは強い自信をもっているように見える、というのが大方の意見だと思います。
僕も以前はそのように感じていましたが、自信論争の記事を読んだときに、仕事に対する女性の苦悩はアメリカもまったく同じだなと思いました。
――心理カウンセラーから見て、やはり自信のない女性は多い?
五百田 キャリアカウンセリングをする中で、女性たちと話をしていると、「自信がない」という声は大変多いです。
「そもそも自信とは何か」という疑問に本書は答えてくれています。自信は、精神的安定や幸福にとって必要なだけでなく、行動、そして決断まで網羅するものだと。ただ、「自信」といっしょくたにしてしまいがちだけど、カウンセリング用語にも「自己効力」というものがあり、これまで私は、イコール自信だと解釈していました。自己効力を高めるためには、「どんどん行動して失敗して、自信をつけよう」などとアドバイスしていたものです。
ニュアンスの違うポジティブな性質をもつ言葉があることを指摘している点は、カウンセラーとして非常に参考になりました。
たとえば「自尊感情」は、自分は愛すべき存在で、人間として価値があると信じさせてくれるもの。「楽観主義」は、物事に対する自分の見方・解釈の問題。「自慈心」は、自分に対して優しくあろうという考え方。「自己効力感」は、ある事柄を成し遂げる能力があると思える信念のことで、「習得できる楽観主義」とも言えるそうです。
この日本社会において、女性は自信を身につけにくい環境にあります。21世紀になっても相変わらず、会社では男性は我がもの顔で歩き、女性ははじっこを歩かされる中で一生懸命に働く。働き過ぎてメンタルを崩したり、弱っているところをタチの悪い男性につけこまれたり......という悪い循環にはまっていく人が多い。
男性が思っているよりずっと、女性は自信をもてない環境にあるのです。
――では、男性は自信をもっていると言える?
五百田 男性は単に、自信がなくても、自信があるように振る舞うことに慣れているのでしょう。