──ゴージャスな年長者がいるのはニューヨークだからこそ?
確かにニューヨークには独特の大胆さや独創的な雰囲気があり、恐れを知らない女性が多いのは確かだろう。彼女たちが、街をランウェイに見立てている感じもする。でも最近訪れたアムステルダムにも素敵な女性はたくさんいたし、銀座を2時間歩いたときには10人以上の写真を撮ったよ。
──映画に登場する女性たちに、改めて教えてもらったことはあるか。
彼女たちの物語を聞くことで、自分自身の人生について気付くことがあったり、学ぶことは多い。でも僕は映画を撮る以前から彼女たちと強いつながりがあったから、改めて、というものはないかもしれない。
まあ、新しい発見といえば、それぞれの女性と自分が1対1で接している時と違い、みんなを一緒にすると意外にいろいろな力学が働くんだな、ということ(笑)。
何か問題が起きれば一丸となって立ち上がるし、互いの面倒も見合う。でもみんな自尊心や競争意識があり、健全な虚栄心も持っている。どこかにライバル意識があるのはすごく興味深かった。
年齢に対する差別意識みたいなものが生まれるのは、世代を越えた交流がないからではないか。僕には2人の祖母という素晴らしいロールモデルがいたから、年を取ることを肯定的にしかとらえていない。でも、メディアが年長者を主役として扱うことがないとか、死を連想させるイメージしか発信していないとか、そういう問題はあると思う。
──その素晴らしいロールモデルという祖母たちはどんな人だった?
両親が共働きで忙しかったから、いろんなことを知るきかっけを作ってくれたのは祖母たちだった。特に「クリエイティブなことをしたいならニューヨークに行くべき」と勧めてくれた祖母ブルーマは、僕のバイブルみたいな存在だった。自分が若かった頃の、コンピュータや車がない時代の写真を見せてくれたり、古い映画や音楽を教えてくれたり。図書館の司書をしていたので、一緒に図書館に行って本をたくさん借りたりもした。