──日本でも劇画を読む人がまた出てくるかもしれない。
そうしたら素敵だね! 劇画は60年代にブームになったが、70年代後半〜80年代くらいにポルノチックだったり暴力的だったりというものが出てきて......。例えば、実際に起きた犯罪が劇画に影響を受けている、なんて新聞に書かれたりもした。そんなことから、劇画が敬遠されてしまったりしたようだ。それは先生の意図する劇画とは違う方向だった。60年代には、オルタナティブミュージックみたいにちょっとヒップというか、かっこいいものだった。
──あなたが「映画にしたい」と言った時の辰巳さんの反応は?
「気がおかしいんじゃないか」「私の短編をつなげた映画なんか撮ったら、劇場で見た人は窓から飛び降りたいと思っちゃうよ」と言ってた。もちろんブラックなユーモアですけどね。でも、「暗い」ということは本人も十分承知していた。
──辰巳さんは出来上がった作品を見て、何と言っていた?
おののいていた。彼の声がナレーションで使われちゃったから(笑)。
すごくシャイで謙虚で、自分の声に自信がないようだったから、「先生に話していただいた内容を、プロの声優に話してもらいますよ」と言っておいた。でも、そんな人は探さなかった(笑)。
映画自体は楽しんでくれたようだ。自分の作った登場人物に息が吹き込まれた、と。先生はもともと映画監督になりたかった人なんです。だからこの作品が素晴らしいのは、「先生がついに映画を作った」というところだと思う。
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