結局、ロイやジョーの推理は正しかったことが判明する。2人とも政府が汚染を理由に立ち入りを禁じた場所に忍び込むが、ガスマスクを外してみれば空気は何ともない。立ち入り禁止は、政府が極秘裏に未知の生物を研究するための方便だったのだ。
怪獣の在り方も『未知との遭遇』のエイリアンに似ている。『GODZILLA』に登場するゴジラと敵の怪獣ムートーは、不気味な静寂の中から姿を現す。身体に熱エネルギーをため込んでいるため、行く先々で停電を起こし、電子機器をシャットダウンさせる。
これもスピルバーグが使った手だ。『未知との遭遇』でも『宇宙戦争』でも、エイリアンは電磁波で電子機器を故障させてから現れる。『ジュラシック・パーク』の恐竜に電磁波を発生させることはできないが、それでも停電中に電気柵を破って登場する。
『GODZILLA』の怪獣が路面電車を脱線させるシーンは、『ジュラシック・パーク』で恐竜が自動車をひっくり返す場面をそのまま失敬したようだ。
昔のドライな作風が手本
エドワーズと撮影監督のシェーマス・マクガービーは、技術面でもスピルバーグの手法を踏襲した。スピルバーグが『ジョーズ』や『未知との遭遇』、『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』を撮った特殊なアナモルフィック・レンズを使い、1対2・35の縦横比を採用した。
映像表現にもスピルバーグ色が感じられる。特に顕著なのが、未知の生物や物体を呆然と見詰める「スピルバーグ的表情」だ。『GODZILLA』の登場人物たちは、あちこちで起きる異常事態に目を丸くする。
闇を貫く懐中電灯の明かりや光の筋もスピルバーグがよく使う構図。さらに映画評論家のマット・ゾラー・サイツが「撮ったというより描いたような」「絵本のような」と評した空の独特な質感も、元は巨匠のトレードマークだ。