最新記事

注目作

韓流戦争映画はここまで来た

Bleak Blockbusters

印刷

最後にシニカルな展開

 朝鮮戦争をテーマとする近年の韓国映画には、ある種の傾向が見て取れる。誰かが国のために命を落とすのは、上官の命令が間違っていたか、部隊全員が死をいとわずに作戦を実行した場合が多い。兵士が戦場で昇格するのは、上官が戦闘で死亡したからというより、上官が部下に殺されたり上官自身が狂って自殺した結果であることが多い。

 韓国映画が描く南北朝鮮の争いには、効果的な戦略も正当な目的もありはしない。南北の統一など、はなから無理だと思われていて、命令はことごとく的外れだとされる。指揮官は勝てるはずのない戦争を優勢に進めているように取り繕い、実際に戦場で戦っている兵士たちは、ともかく生きて帰りたいと願っている。

『高地戦』の終盤にも、ハリウッドであれば考えもしないようなシニカルな展開が待っている。登場人物の戦ってきた戦争が、倫理的には許されざるものだったとされる。「俺たちはあまりに多くの命を奪った。みんな地獄行きだ」と、登場人物の1人が言う。

 最後は、ジョン・カーペンター監督『遊星からの物体X』(82年)のエンディングへのオマージュで、南北朝鮮の関係を要約する仕掛けになっている。お互いを信用していない2人の男が暗闇の中に座り、1本の酒を分け合っている。そして、相手を殺せという命令が下るのを待っている......。

[2012年2月22日号掲載]

今、あなたにオススメ

最新ニュース

ワールド

ペルー大統領、フジモリ氏に恩赦 健康悪化理由に

2017.12.25

ビジネス

前場の日経平均は小反落、クリスマス休暇で動意薄

2017.12.25

ビジネス

正午のドルは113円前半、参加者少なく動意に乏しい

2017.12.25

ビジネス

中国、来年のM2伸び率目標を過去最低水準に設定へ=現地紙

2017.12.25

新着

ここまで来た AI医療

癌の早期発見で、医療AIが専門医に勝てる理由

2018.11.14
中東

それでも「アラブの春」は終わっていない

2018.11.14
日中関係

安倍首相、日中「三原則」発言のくい違いと中国側が公表した発言記録

2018.11.14
ページトップへ

本誌紹介 最新号

2024.12.31号(12/24発売)

特集:ISSUES 2025

2024.12.31号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

INTRODUCTION 今、世界は現代版『ゲルニカ』だ ── A・コーエンソラル
2025 WHO’S NEXT ドナルド・トランプ(次期米大統領)/ウォロディミル・ゼレンスキー(ウクライナ大統領)/蕭美琴(シアオ・メイチン)(台湾副総統)/ムハンマド・ビン・サルマン(サウジアラビア皇太子)/張又俠(チャン・ヨウシア)(中国中央軍事委副主席)/金正恩(キム・ジョンウン)(朝鮮労働党総書記)/マリーヌ・ルペン(仏「国民連合」前党首)/ウラジーミル・プーチン(ロシア大統領)/キア・スターマー(英首相)/佐々木朗希(プロ野球投手)/韓東勲(ハン・ドンフン)(韓国「国民の力」前代表)/AI(人工知能)
U.S. POLITICS トランプ再登板で試される民主主義 ── E・チェメリンスキー
MIDDLE EAST 混迷の中東に差し込む一筋の光明 ── D・ロス
SOUTHEAST ASIA 平和と正義と繁栄をASEANが広げる ── A・イブラヒム
AI 食いしん坊AIを飢えさせないために ── E・シュミット
RUSSIA 帝政ロシアの過ちに学ばない愚かさ ── S・C・M・ペイン
CHINA 中国経済に絶望するのはまだ早い ── N・チエン
U.S.ECONOMY トランプ景気の再来に立ち込める暗雲 ── K・ロゴフ
JAPAN 日本政治のしなやかさは民主主義の希望に ── T・ハリス
ENVIRONMENT 「三重債務危機」が地球を壊す ── V・ソンウェ、G・シュミットトラウブ
デジタル雑誌を購入
最新号の目次を見る
本誌紹介一覧へ

Recommended

MAGAZINE

特集:静かな戦争

2017-12・26号(12/19発売)

電磁パルス攻撃、音響兵器、細菌感染モスキート......。日常生活に入り込み壊滅的ダメージを与える見えない新兵器

  • 最新号の目次
  • 予約購読お申し込み
  • デジタル版

ニューストピックス

人気ランキング (ジャンル別)

  • 最新記事
  • コラム&ブログ
  • 最新ニュース