世界有数の大銀行BNPパリバの経営陣が集まるのはナポレオンゆかりの会議室。ドイツの鉄鋼メーカー・ティッセンクルップの重役はモダンな本社ビルから工場の遺構を見下ろし、会社の歴史に思いをはせる──。
オランダ生まれのアーティスト、ジャクリーン・ハシンクが最新プロジェクトで取り組んだのは、ヨーロッパのトップ企業40社の無人の会議室を撮影すること。写真集『テーブル・オブ・パワー2』に収められた写真からは、巨大企業の知られざる文化や歴史が垣間見える。
90年代にハシンクは、同様のコンセプトの写真集を出版し、好評を博した。最近その続編を製作することを思い立った理由は、08年のリーマン・ショックを経て現在はユーロ危機に直面するヨーロッパの大企業が、この15年でどんな変化を遂げたか記録するためだ。
経済状況が悪化するなか、神経をとがらせる企業も多い。フランスの大手銀行クレディ・アグリコルの担当者は、「顧客の皆様にお見せするのはまったく不適切だ」という理由で豪華会議室の撮影を拒否した。
誰もいない会議室は、時代の変化に翻弄され、歴史を刻む企業の今を語りかける。
Photographs by Jacqueline Hassink, "The Table of Power 2", Hatje Cantz 2012
<2012年2月29日号掲載>