世界の紛争地域を渡り歩くフォトグラファー、パオロ・ペレグリンは2006年、イスラエルの侵攻を受けたレバノン南部の町ティールにいた。爆発音を聞いて現場に駆け付けると、1人の男が道に倒れてもがいていた。「助けるか、それとも死にざまを撮影するか」。彼がそう迷ったとき、2発目のミサイルが男を襲った。男は暗殺の標的だったのだろう。
ミサイルはペレグリンのわずか数メートル前方に落ちたが、大きなけがは負わずに済んだ。彼はカメラを手につかみ、瀕死の男の写真を3枚撮った。この場面に自分が居合わせた意味とは何か、目撃者となって物語を伝える大切さとは何か、自問しながら----。
新刊写真集に掲載されたインタビューでペレグリンはこう語っている。「危険はある程度までコントロールできるが、その一線を越えると選択の問題になる。左に行くか、右に行くか。この道を行くか、あの道を行くか。すべての選択が紛争地域では死につながる。経験や知識、直感をフルに働かせても、自分ではコントロールできない領域がある」
危険な状況に身を投じ、生と死の目撃者になること。その使命感を胸に、ペリグリンは再び紛争地帯へと向かう。
新刊本 "DIES IRAE"(伊コントラスト社刊)
Photographs by Paolo Pellegrin-Magnum Photos Tokyo
[2011年6月8日号掲載]