日本でも石炭や石油などの化石燃料や原子力による発電に代わるものとして、再生可能エネルギーの発電所が増えている。しかしその設置方法には、日本ならではの特徴がある。
数千年にわたる日本の歴史と文化に根付いているのは、限られた土地と水を再利用し、さまざまな用途で使うという伝統だ。その流れが、再生エネルギーの開発にも生かされている。
私は2010年から、ヘリコプターや小型機を使ってアメリカ西部の広大な砂漠に造られた大規模な再生可能エネルギー事業を写真に記録してきた。それら太陽熱発電や風力発電の施設は一般的に、設備容量は100~550メガワットで、人が住んでいないか、人口の少ない土地に建てられている。
日本の国土面積の25倍、人口密度は10分の1というアメリカでは、再生可能エネルギー施設が都市部や農業地帯に入り込むことはない。
日本では対照的に、農村部と都市部が複雑に入り組む地形に施設を置かなければならない。それらの施設は都市や郊外、商業地域、森林などに、独特で感動的とも言える形でちりばめられている。太陽光発電所はアメリカのものより小規模で、しばしば水田や温室、住宅地などに隣接。かつての土砂採取場やゴルフコース、人工島に建てられたり、池や貯水池の水面に浮かべられたりすることもある。
特に水面に浮かべる方法は、土地の値段が高い日本では強みになる。設置が盛んなのは、池や貯水池の数が多い兵庫県だ。水上の太陽光発電所なら整地が要らず、地震にも強い。水の蒸発冷却効果で効率的に電気を作ることができるし、貯水の蒸発量や藻類の異常な発生を減らす効果もある。
16年後半には、日本の電力総量の14%を再生可能エネルギーによる発電が占めた。水力発電の割合が最大で、太陽光は全電力需要の5%を担っている。将来的には、太陽光のほか洋上風力発電、潮力発電、地熱発電などが、化石燃料による発電への依存を大きく減らすだろう。
日本各地の太陽光発電所を空から捉えたこれらの写真から、再生可能エネルギーの大きな可能性が見えてこないだろうか。われわれが先を見通して気候変動の問題に積極的に取り組むことで、未来の世代のために持続可能な社会を築くことができる。
<撮影:ジェイミー・スティリングス>
30年以上にわたってファインアートからドキュメンタリー、商業写真まで幅広く手掛けてきたベテラン写真家。近著にカリフォルニア州モハベ砂漠の巨大太陽熱発電システム建設を記録した『ジ・エボルーション・オブ・アイバンパー・ソーラー』(独シュタイデル社刊)などがある
Photographs by Jamey Stillings
<本誌2017年8月15&22日号掲載>
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