西アフリカに位置する、人口約410万人の小国リベリア。この国では80年代終わりから00年代にかけ断続的に政府軍と反政府勢力による戦いが起きた。20万人以上の死者を出したその内戦が終結してから、今年で10年が過ぎようとしている。
05年にアフリカ初の女性大統領として選出されたエレン・サーリーフの下、現在のリベリアは復興の道を歩みだしている。10年前と現在の街の風景や人々の様子は明らかに違う。戦闘の最前線だった首都モンロビアのウォーターサイド・マーケットでは銃弾で穴だらけになった壁が撤去され、人や車でごった返している。
しかし、人々の生活から戦争の影が完全に消え去ったわけではない。失業率は80%に達しており、雇用や貧困対策はほとんど進んでいない。経済復興の恩恵を受けているのは主に富裕層で、中流層以下の生活水準は以前とほとんど変わっていない。
「平和になったのはいいが、生活は楽にならない」。それが、多くの市民に共通した不満だ。平和が続けば、いずれ内戦の記憶も風化し、銃を手に戦った少年や少女たちのことも忘れ去られるかもしれない。だが、戦争に傷つけられた彼らの人生を取り戻すことはできない。
Photographs by Kuni Takahashi
<本誌2013年5月14日号に掲載>
関連近刊本:
「戦争がなかったら」高橋邦典(ポプラ社刊)
内戦下で小さな手に銃を携え戦った少年兵たち、砲弾で右手を失った少女、それぞれの10年を丁寧に追った記録。国のために戦ったのに、戦争が終われば政府からの補償もなく見捨てられたーー多くの元少年兵たちは、苦い思いを抱きながら、ただ食いつなぐだけの日々を送る。教育の機会を奪われた彼らは未来に希望を見いだせず、いつまでも戦争の闇の中を生きている。