近年は、災害や紛争、事件、事故などの現場に偶然居合わせた人たちが携帯電話のカメラ機能を使って記録する機会が増え、撮影された画像はニュース写真としての役割を果すことも多くなった。だが半世紀も前にテキサス州ダラスで起きたジョン・F・ケネディ大統領暗殺事件もまた、アマチュア写真家によって貴重な記録が残されていた。
惨事へと転じるパレードの沿道には、当時の中流階級に普及していた比較的安価なカメラを手にした市民たちが繰り出していた。大切なイベントに一緒に出かけた家族や恋人の記念写真を撮るついでに、目の前を通過する大統領の姿を自らのカメラに収めようという軽い気持ちだったのだろうかーー新しく買ったカメラの性能や自分の撮影技能を試すつもりだったのかも知れない。
歓声の高まりとともにケネディ夫妻を乗せたオープンカーが、視界に滑りこんでくる。笑顔で手を振る大統領を凶弾が襲った瞬間にシャッターが切られたフィルムには、悲劇のクライマックスが写っていた。
ニューヨークの国際写真センターでは、アマチュア写真家たちが撮った写真を中心に構成した展覧会「1963年11月22日:市民が記録したケネディ暗殺の1日」を開催している(2014年1月19日まで)。チーフキュレーターのブライアン・ウォリスは、「(ニュース用の)写真はプロのカメラマンが撮るものという常識は、1963年11月22日に崩れ去った。それに代わって、カメラを持って見物していただけの市民カメラマンたちが、この忘れがたい瞬間と歴史的な重要性を記録する上での中心的な役割を果たした」と語る。プロの写真家とは違った視点で撮られた写真の中には、「市民ジャーナリスト」のひとつの起源が見られ、プロのニュースカメラマンの役割についても考えさせられる。
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「JFK November 22, 1963: A Bystander's View of History」
編集部ーー片岡英子
*本誌11月12日号(11/5発売)では、ケネディ大統領一家と暗殺事件の写真特集「50年を経てよみがえるJFKの精神」を掲載中です。