南アフリカは来年、アパルトヘイト(人種隔離政策)が撤廃され、初の全人種参加選挙が行われた94年から20周年を迎える。この決断で弾圧と人種差別の国は、多人種国家として奇跡的な発展を実現した。黒人のニューエリートが現れ、黒人の中間所得層も台頭。「黒いダイヤモンド」と呼ばれる彼らの購買力は、アパルトヘイト撤廃の最大の産物だ。都市部の最貧困層にとっては、その成功こそ憧れであり希望である。
写真家のペール・アンデシュ・ペッテションは94年、全人種参加選挙を取材するため南アフリカを訪れた。そしてこの国に魅了された彼はその後、黒人と白人双方の複雑な真実を追い続けた。
南アフリカにとって民主主義は、多くの犠牲を払って手に入れた宝石だ。しかしこれは大きな見返りとともに、国民に新たな苦難をもたらしている。凶悪犯罪の急増や貧困、高い失業率、疫病......。貧困層が抱いてきた憧れや希望も、過去10年間の強欲と幻滅の中で失われつつある。
20年前、初の黒人大統領となったネルソン・マンデラが目指した「虹の国」。現在のこの国は彼の夢にどれだけ近づいたのだろう。
Photographs from "Rainbow Transit" (Dewi Lewis Publishing) by Per-Anders Pettersson
新刊写真集「Rainbow Transit」
<本誌2013年8/13,20日号掲載>