今年2月24日にロシアがウクライナに対して「特別軍事作戦」と称して始めた戦争は世界に衝撃を与えた。日々の戦況から離れて俯瞰することで見えてくるものがあるのではないか。そういう問題意識から今特集では内外の専門家にさまざまな角度からの分析を求めた。もちろん戦争は進行中であり、本特集も夏頃までの状況を前提とした暫定的な考察であるから限界はある。それでも今特集が読者にとって、この不幸な戦争とこれからの世界について考える機会となることを祈りたい。
目次
【特集】
- ウクライナ戦争が提起する五つの論点デイヴィッド・A・ウェルチ
- プーチンはなぜ予想外の戦争を始めたか廣瀬陽子
- ウクライナの抵抗力の源泉──プーチンの理解を超えた多様性の力アンドリー・ポルトノフ
- 「相互依存の罠」──経済の武器化に潜む落とし穴鈴木一人
- 二つの神話の崩壊とエネルギー地政学の復活竹森俊平
- 南アジアとウクライナ戦争──カギとなる中国要因マリー・ラル
- 台湾で「他者」となる中国野嶋 剛
- リアリズムの誘惑、リベラリズムの憂鬱──問われる核の役割秋山信将
- 「大きな物語」なき時代の戦争と二十一世紀の平和の条件中西 寬
【対談】
- 超大国間競争へと回帰する世界ビル・エモット+田所昌幸
【世界の思潮】
- 文学は魂の糧沼野恭子
- 心中とフェミサイド──一八八八年シャンビージュ事件梅澤 礼
- テロとナチスとアルジェリア鵜戸 聡
- ヨーロッパ中心主義への挑戦──国際関係論の現場から向山直佑
- ポール・ボルカーの残したもの白川方明
【時評】
- 歌枕──名所と愛の世界高階秀爾
- 文化資源としての校歌──その変容に秘められたドラマ渡辺 裕
- 建築への関心の高まり藤森照信
- 大きな振幅を生むアメリカ例外主義渡辺 靖
- ウクライナと日本の核──感情の前景化にあらがって武田 徹
- 「かりそめの停戦」に抗うウクライナの人々合六 強
- ウクライナ戦争が映し出す宗教と政治松本佐保
- 女がリベラルに目覚める時岩間陽子
- ヴィンテージ・ピアノ青柳いづみこ
- 寂しい港、寂しい日本阿川尚之
【写真で読む研究レポート】
- ニューヨークと崔承喜李 賢晙
- Avidya on Spider's Web 蜘蛛の巣上の無明──電子の網目へと仮想化する蜘蛛手の街にて稲賀繁美
【連載企画「超えるのではなく辿る、二つの文化」】
- 解く理系に問う文系櫻井悟史+プラダン・ゴウランガ・チャラン+三谷宗一郎+宮野公樹
【連載】
- 今みなおす江南史──「マンジ」の変貌岡本隆司
- 昆虫学事始──日本の昆虫研究を支えた人々奥本大三郎
- 平成史──冷戦後の国際変動と日本五百旗頭 真