経済学は人々の経済活動を研究する学問である。そのため、その研究結果と生活実感は、かなり合致するはずである。しかし、経済学者の多くが同意している定説や命題が世間では正反対の見解が支持を得たり、信じられていることがある。その一方で経済学者の間で意見が対立している学説ほど、世間では広く知られているという悩ましい現象もある。本特集を通じて、経済学が直面するこうしたギャップを少しでも解消し、経済学的視点の面白さが読者に少しでも伝われば幸甚である。
目次
【特集】
- 「経済学の常識」は「世間の非常識」か?土居丈朗
- 「低所得者」は「経済的弱者」なのか?宇南山 卓
- 高額転売の何が問題か?──「需要法則」からの接近安田洋祐
- 法人税は「企業」が負担するものか?別所俊一郎
- 健康経営は業績向上につながるか?黒田祥子
- 日本の医療制度をどう設計するか?──利他性を支える政府の関与井伊雅子
- しっかり稼げる大人にするには?──非認知能力の重要性中室牧子
【論考】
- 異人歓待と羽衣伝説──ホスピタリティの系譜学における日本松森奈津子
- イデオロギー・歴史・知識人──中国現代思想の景観福嶋亮大
- マルセル・ダッソー──ミラージュ戦闘機の生みの親上原良子
【世界の思潮】
- 「喪の作業」としての平成文明論酒井 信
- 夜闇へのまなざし──本居宣長とチャールズ・テイラー島田英明
- からだの言葉で人間を理解する齋藤亜矢
- シェイクスピアの物語るアメリカの分断塚田雄一
【時評】
- 「再現模造」の魅惑の世界高階秀爾
- 建築とスパイ藤森照信
- 地球のウラ側のもうひとつの吹奏楽渡辺 裕
- アメリカが今でも嫌いですか?阿川尚之
- NATOを覚醒させたウクライナ侵攻広瀬佳一
- 非英雄的な平和と英雄的な抵抗田所昌幸
- コロナ後の社交山極壽一
- 人生論養老孟司
- 文章と言語モデルと「私」川添 愛
【写真で読む研究レポート】
- アーカイブの夢、地方からの照射──浪曲史の編み直しにむけて真鍋昌賢
- 吉原遊廓の四季と年中行事田中優子
【連載】
- 今みなおす江南史──「マンジ」の国から岡本隆司
- 昆虫学事始──日本の昆虫研究を支えた人々奥本大三郎
- 夢を種蒔く人・厨川白村──左足切断そしてアメリカ留学(下)張 競