治安は良好で、平均寿命は世界最高水準、一人当たりのGDPもまずは世界に遜色のない水準とくれば、我々はさぞ幸福なはずである。だが、長らく国際的な意識調査は、日本人の幸福感が経済的条件から予想される水準よりも相当低いことを示してきた。しかも不思議なことに、「失われた」と称されることの多い過去二〇年の間、今度は日本人の幸福度はむしろ上昇してきたことも同様の調査は示している。いったいこれは何を意味するのだろうか。戦争も飢餓もない時代の幸福と不幸を考えてみよう。
目次
【特集】
- 巻頭言
- 幸福論の幸不幸鷲田清一
- 幸せになった日本人ニール・ネヴィット
- 幸福を追求するアメリカ人――反知性主義と宗教森本あんり
- 〈不幸〉の政治学へ――近代ヨーロッパ思想史の一解釈髙山裕二
- 幸福の経済学ニック・ポータヴィー
- 日本人の幸福度――経済学は幸せを語れるか大竹文雄+黒川博文
- 日本の「若者」はこれからも幸せか古市憲寿
【論考】
- 逃亡の時代――大阪「ディープサウス」形成史から酒井隆史
- 生まれつきの能力に応じた教育?――経済学への応答広田照幸
- 自殺を語る社会――物語論の視点から川野健治
【地域は舞台】
- 歴史を受け継ぎ文化を生み出す
――能勢 浄瑠璃の里(大阪府豊能郡能勢町)桑田瑞穂
【世界の思潮】
- 「例外」国家としてのソマリランド篠田英朗
- 革命外交史観の打破川島 真
- 普通の大国になったアメリカ鈴木一人
- 「だから言っただろう!」――ジハード主義者のムスリム同胞団批判池内 恵
【時評】
- 世界文化遺産としての富士山高階秀爾
- 日本橋の上に架かる高速道路は「景観破壊」か?渡辺 裕
- ドイツのマイスター藤森照信
- 揚州十日記奥本大三郎
- 明治維新、維れ新たなり――最近の研究書から苅部 直
【連載】
- リズムの哲学ノート――第二章 リズムと持続山崎正和