アステイオン

多文化社会

祈りと歌と食でつながる、東京の一角にあるエチオピア正教会

2024年09月18日(水)11時00分
川瀬 慈(国立民族学博物館
学術資源研究開発センター教授)

聖書の朗誦

聖書の朗誦(筆者撮影)

聖書の朗誦、説法、讃美歌の歌唱が休憩をはさまずに延々と続く。参加者の歌声が重なりうねり、会場は熱気に包まれる。

すると司会のアブレさんが必ず、「周りは住宅街なので、あまり大きな声で騒がぬように」と参加者に注意する。司会者としての彼の一挙一動に近隣住民、ひいてはホスト社会への過剰なまでの配慮がみられる。

集会後にふるまわれるインジェラ

集会後にふるまわれるインジェラ(筆者撮影)

正午を過ぎ、儀礼がひと段落すると、エチオピアの主食、インジェラ(テフというイネ科の穀物でできた灰色のパン)にたっぷり、おかずの肉類がのせられた皿が参加者にふるまわれる。

日本では入手不可能なエチオピアのスパイス等を自宅からそれぞれ少しずつ持参し、会場で料理をこしらえるのだ。数人で円になり、羊肉や鶏肉を手でインジェラに包んで頬張る。厳粛な儀礼を終え、故郷の味に舌鼓を打つ参加者たちのこぼれそうな笑みが目に焼き付く。

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