聖書の朗誦、説法、讃美歌の歌唱が休憩をはさまずに延々と続く。参加者の歌声が重なりうねり、会場は熱気に包まれる。
すると司会のアブレさんが必ず、「周りは住宅街なので、あまり大きな声で騒がぬように」と参加者に注意する。司会者としての彼の一挙一動に近隣住民、ひいてはホスト社会への過剰なまでの配慮がみられる。
正午を過ぎ、儀礼がひと段落すると、エチオピアの主食、インジェラ(テフというイネ科の穀物でできた灰色のパン)にたっぷり、おかずの肉類がのせられた皿が参加者にふるまわれる。
日本では入手不可能なエチオピアのスパイス等を自宅からそれぞれ少しずつ持参し、会場で料理をこしらえるのだ。数人で円になり、羊肉や鶏肉を手でインジェラに包んで頬張る。厳粛な儀礼を終え、故郷の味に舌鼓を打つ参加者たちのこぼれそうな笑みが目に焼き付く。
vol.101
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