この集計を行ったシンクタンク、ブルッキングス研究所はトランプ支持地域が、躍動するアメリカ経済から疎外され、ないがしろにされていることをうかがわせると分析している。
ジェフ・ベゾス、ビル・ゲイツ、ウォーレン・バフェットという3人の富豪の資産を合計すると、アメリカ国民の下位50%の資産合計額に並ぶ。そう言った方が、アメリカのすさまじいまでの格差社会がピンとくるかもしれない。尋常ではない世界だ。
アメリカに限ったことではない。英国議会の調査によれば、2030年には、上位1%の富裕層が世界の富の3分の2を支配することになると予想されている。
シリコンバレーのハイテク企業とその創業者らをトップに超格差社会が形成され、さらに世襲によって身分が固定化される傾向がどんどんと強まる。
それを「封建制」の復活だと警告するのは、都市問題専門家ジョエル・コトキンの『新しい封建制がやってくる:グローバル中流階級への警告』(東洋経済新報社)だ。
GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック=現メタ=、アマゾン)の純資産合計はフランスのGDPに匹敵し、それぞれの分野で巨大な市場支配力を持つ。
こうした企業を支配する「テック貴族」たちは、中世貴族のように、インターネット領域ビジネスで「自然独占」を利用し、膨大な個人データを勝手に用いて「デジタル土地収奪」を行ってきた。
エンタメ、金融と手を結び、さらに自動運転システム、ドローン、宇宙開発、人工知能(AI)といった未来産業の支配に向かっている。説明責任のほとんどない少数者が強大な権力を握っていく。
こうしたテック貴族エリートの寡頭支配層はメディアや大学を牛耳る知識層とも結託している。それは、ちょうどエリート貴族が聖職者と権力を分け合い、封建社会の中核となっていたのと同じだと、コトキンは言う。
テック貴族、知識人聖職者の寡頭支配体制の下であえいでいる現代の「第3身分」(平民)は、やせ細っていく中産階級、さらにその下で資産もなくギグワークであえぎながら生きる労働者階級だという。
カリフォルニア州の大学で都市問題を研究するコトキンが描く同州の封建的状況は特にすさまじい。
民主党が強く「進歩的」とみられている同州は貧富の格差を示すジニ係数は全米で最高レベル、米国の生活保護受給者総数の3分の1がカリフォルニアに住む。州内でも最も進歩的とされるサンフランシスコ市は過去10年を見ると全米の都市で最も格差が広がっている。
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