アステイオン

中国

習近平「中華民族の偉大な復興」を理解するための3つの補助線

2023年08月30日(水)11時05分
鈴木絢女(同志社大学法学部教授)

主権国家システムは普遍的な秩序ではないかもしれない(※4)。複数の世界秩序が併存する世界では、自分の寄って立つ秩序を正義とし、それに従わない者を「修正主義者」と断じるアメリカ的なアプローチは、支持を集めにくい。

中国がどのような世界秩序を描いているのか、地域の国々がそれをどう受容・拒否しているのか、既存の国際秩序にどのような欠陥があるのか。

第二次世界大戦の敗戦国であり、西側先進民主主義国でありながらアジアの一員であり、漢字文化圏に属する日本だからこそ答えられる問いが多くありそうである。


[注]
(※1)South China Morning Post, "Malaysian Foreign Minister Hishammuddin Hussein Clarifies Controversial 'Older Brother' Remark during China Visit," April 3, 2021.
(※2)浜下武志(1990年)『近代中国の国際的契機:朝貢貿易システムと近代アジア』東京大学出版会、p39。
(※3)弘末雅士(2004年)『東南アジアの港市世界:地域社会の形成と世界秩序』岩波オンデマンドブックス、p47。
(※4)Spruyt, Hendrik (2020), The World Imagined: Collective Beliefs and Political Order in the Sinocentric, Islamic and Southeast Asian International Societies, Cambridge University Press.


鈴木絢女(Ayame Suzuki)
1977年横浜生まれ。2008年、東京大学大学院より博士(学術)取得。マラヤ大学ポスドクフェロー、福岡女子大学講師、同志社大学准教授、デラサール大学客員教授などを経て、2020年より現職。主著に『〈民主政治〉の自由と秩序:マレーシア政治体制論の再構築』(京都大学学術出版会、2010年)。2011年大平正芳記念賞、2021年中曽根康弘賞(奨励賞)受賞。



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 『アステイオン』98号

  特集:中華の拡散、中華の深化──「中国の夢」の歴史的展望
  公益財団法人サントリー文化財団・アステイオン編集委員会[編]
  CCCメディアハウス[刊]


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