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殺した相手のスマホで、ロシア兵は故郷に連絡をした──「オシント」と戦争報道の新時代

2023年02月15日(水)08時09分
八田浩輔(毎日新聞外信部専門記者)

例えばオランダに拠点を置く民間の軍事情報サイトは、戦地から発信される画像や動画を詳細に分析し、ロシア・ウクライナ両軍が戦闘で失った装備品をリスト化して公開している。

米国の宇宙企業は、ロシア侵攻後のウクライナ各地で集団墓地とみられる地面を掘り返した跡が広がっていることを自社の衛星写真で確認した。

国際人権NGOは専門チームでSNSを監視し、国際条約が禁じるクラスター爆弾の使用で民間人が殺傷された「戦争犯罪」の証拠になる映像の検証と収集を続ける。そして、互いに会ったことはないが、志を共有するユーザーたちが集うオンラインのオシントコミュニティは、ロシアが引きも切らず流し続ける偽情報を、今この瞬間も暴いている。

ここに挙げた人びとの多くは、戦地から遠く離れた自宅やオフィスから戦争の実態の可視化を試みている。

英軍情報機関トップのジム・ホッケンハル戦略コマンド司令官は、デジタル時代のオシントは「戦争の霧を晴らす」役割を果たしていると指摘する。

同氏は昨年11月の講演で、ロシアのウクライナ侵攻を巡るオシントの意義を6つに分類して考察し、衛星写真やソーシャルメディアなど商業的に利用可能なサービスが戦況の先読みに大きく寄与していることを認めた。

例えば2022年2月24日のロシア侵攻開始の数時間前、グーグルマップには予兆が現れていた。

現地時間の午前3時過ぎ、ウクライナ国境に近いロシア側の道路に渋滞情報を示す赤い線が表示されたのである。ロシア軍の車列がウクライナに向かっていることを示していた。プーチン大統領がテレビ演説で「特別軍事作戦」の実施を表明したのは、それから数時間後のことだった。

インテリジェンス・オフィサーとしてのキャリアが長いホッケンハル氏は、こうした「すべての人が見て解釈できる」オシント分析の共有は、パートナー国のみならず国民との信頼醸成にもつながると説明する。大量破壊兵器を巡る誤った情報分析を基にイラク戦争参戦に踏み切った過去の苦い教訓をふまえての発言であることは、想像に難くない。

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