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将来、しっかり稼ぐ大人にするために、子供の頃にどのような教育を受けていればよいのだろうか。一番の近道は、「偏差値の高い大学へ行くことだ」と考える人は多いのかもしれない。本当に、偏差値の高い大学へ行けば、将来の収入は高くなるのだろうか。
偏差値の高い大学はどうかはさておき、大学へ行くこと自体は正しい選択だと言えるだろう。特に、近年、大卒の賃金プレミアム(大卒であることによって得られる賃金の上乗せ分)は高まっている[Oreopoulos & Petronijevic, 2013]。
しかし、「偏差値の高い」大学であるべきかどうかについては、研究によって結果が分かれている。それどころか、有力な研究の多くが、偏差値の高い大学に進学することが収入に与える効果はほとんどない、あっても極めて小さいことを示している。
例えば、マセマティカ研究所のステイシー・デール研究員らは、1976年にアメリカ国内の大学に入学した1万5000人が「どの大学に合格し、どの大学に不合格で、最終的にどの大学に進学したか」という情報と、1996年時点のその人たちの収入の情報を照合して分析を行った[Dale & Krueger, 2002]。
ご承知の通り、アメリカの大学入試は、日本とは異なっている。アメリカでは高校の成績や教員からの推薦状、エッセイ、過去のボランティアやリーダーシップの経験などによって多面的に評価される。決して、筆記試験の結果のみで選抜されるわけではないということを心に留めておいてほしい。
ここで、表1のように、同じ大学に合格し、同じ大学に不合格だったAさんとBさんという二人がいたと仮定する。
しかし、この2人が最終的に進学先として選んだ大学が違っていたとする。Aさんは合格した大学の中で最も偏差値の高い私立大学に進学したが、Bさんは、Aさんが進学した私立大学よりは偏差値が低いけれども、自分の関心のある分野が学べる地元の市立大学に進学した。
デール研究員らは、AさんとBさんの1996年時点の収入のデータを比較することで、偏差値の高い大学に行くことが収入に与える効果を明らかにしようとしたのだ。
どうして、偏差値の高い大学と低い大学の卒業生の収入を単純に比較してはいけないのだろうか。ここでは、皆さんもよくご存じのテレビアニメ「ドラえもん」の設定を借りて説明する。
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