こういった息苦しい風潮は、究極的にはわれわれの時代の最重要の大義を損なうであろう。抑圧的な政府によってであれ不寛容な社会によってであれ、議論が制限されれば弱者を痛めつけることに変わりはないし、人々の民主主義への参加を難しくするであろう。誤った考えを退ける方法は、誤りを明らかにし、議論し、説得することであり、沈黙を強いたり、それが消え去るのを期待して放置することではない。正義と自由は双方がなければ存立しえないものであり、いずれかを選択することは間違いだとわれわれは考えている。われわれは著述家として実験し、リスクをとり、そして誤りを冒すことすらできる余地のある文化を必要としている。われわれは、職業上の重大な結果を招くことなく、善意の意見の不一致が可能な状態を維持しなければならない。われわれの仕事がよってたつ、まさにこの土台を自分たちで守らねば、一般の人々や国家がわれわれのためにそれを守ってくれると期待すべきではない。
『アステイオン93』
サントリー文化財団・アステイオン編集委員会 編
CCCメディアハウス 発行
(※書影をクリックするとAmazonサイトにジャンプします)
vol.101
毎年春・秋発行絶賛発売中
絶賛発売中