仕方がないので、たまたま自分と年齢が近く、当時、新進気鋭の研究者として注目されていた細谷雄一先生の受賞作『戦後国際秩序とイギリス外交』(2002年「政治・経済部門」受賞、創文社刊)を買い求め、恐る恐る読んでみたら............面白い! なるほど、サントリー学芸賞の受賞作とは、学術的な内容でありながら一般人でも面白く読める本なのかと合点して、さっそく細谷先生に原稿を頼みに行きました(その時は、まさか原稿を頂戴するまでに7年もかかるとは想像もしていませんでしたが、何とか『戦後史の解放Ⅰ 歴史認識とは何か』という選書に結実しました)。
新潮選書は、今回の『選評集』にエッセイを寄せている猪木武徳・武田徹・岡田暁生の各氏をはじめ、選考委員として選評を寄せている奥本大三郎・川本三郎・鹿島茂・佐藤卓己・苅部直の各氏、そして受賞者に至ってはここでは名前を挙げきれないほど多くの方々にお世話になって参りました。いわばサントリー学芸賞が長年にわたり築き上げてきた資産を元手に商売をしてきたわけで、関係者の方々には足を向けて寝られません。
そのような〈学芸界のフリーライダー〉であった新潮選書ですが、ここに来て、『ロマネスク美術革命』(金沢百枝、2016年「芸術・文化部門」受賞)、『中国はなぜ軍拡を続けるのか』(阿南友亮、2018年「政治・経済部門」受賞)、『立憲君主制の現在』(君塚直隆、2018年「政治・経済部門」受賞)と、少しずつ「資産形成」にも関わらせていただけるようになりました。これからもサントリー文化財団の関係者の皆様が作り上げてきた学芸のコミュニティを、選書という中途半端な立場から支えていくことができればと願っています。
*『サントリー学芸賞選評集』は下記サントリー文化財団Webサイト内にてe-pub形式でご覧いただけます。
https://www.suntory.co.jp/sfnd/prize_ssah/list.html
三辺 直太(さんべ なおた)
新潮社 新潮選書編集部
vol.101
毎年春・秋発行絶賛発売中
絶賛発売中