アステイオン

テクノロジー

Society 5.0におけるデザイン力

2018年06月15日(金)
黒川博文(日本学術振興会・同志社大学政策学部 特別研究員・2015年度 鳥井フェロー)

metamorworks-iStock

Society 5.0。狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く、新しい社会、超スマート社会が、内閣府の第5期科学技術基本計画で定義されたSociety 5.0である。AIによって多くの物が自動化され、ロボットの活躍によって生産性が向上するというイメージがある。AIによる自動化によって、定型業務を中心とした職業の半分近くがAIに置き換えられるという議論がある。人間がAIと共存していくためには、どのような能力が必要であろうか?また、そうした能力はどのような形で教育をしていけばよいのであろうか?

AIを正しく理解して使用するというAIリテラシーの向上や、社会システムをデザインする能力が重要になってくる。そのデザイン力は、体系的知識、問題発見能力、実践的スキルの3つの習得が必要で、学校と民間でどのようなバランスで学んでいくかを考える必要がある。また、人生100年時代といわれる今後は、技術再教育も大事になってくる。今回行われた堂島サロンは、栄藤稔教授による「Society 5.0時代の人材教育」というテーマで報告が行われ、そのような主張がなされた。

報告の最初に、Society 5.0の中心キーワードであるAIについて説明が行われた。栄藤氏によれば、現在のAIは、意訳はできないが、非常に優れた直訳を行うことができ、TOIECで900点以上を取るレベルまで来ているそうだ。このような能力のある今のAIは、爬虫類以上げっ歯類・鳥類未満の脳の大きさであるそうだ。人間のような霊長類とこれらとの大きな違いは、大脳皮質の有無である。大脳皮質があることで人間は構造を認識し、空間認知ができるのだ。AIに意訳ができないのは、文の構造、文脈を理解することができないからだ。この大脳皮質を有するかどうかの壁は非常に大きく、AI研究者はこの壁を今後もAIが超えることはないと考えている。この壁を越えてシンギュラリティが来ると期待する人がいるが、AI研究者はシンギュラリティは来ないと否定的である。また、人型ロボットのようなものもがAIと理解する人が多いが、AIは、あくまでもプログラムであって、パターンマッチをしているに過ぎないと正しく理解することが大事だと栄藤氏は指摘する。現在のAIは、そのパターンマッチが高度化してきているのだ。

PAGE TOP