イランはトランプが言うほど敵ではない
<イラン大統領選で穏健派のロウハニが圧勝した。イラン国民が欧米との和解に票を託した証拠だ>
イランはオランダとフランスに続き、今年穏健派が勝利した世界で3番目の国になった。19日のイラン大統領選で、ドナルド・トランプ米大統領に代表されるポピュリズムやイスラム原理主義のような過激な政治思想を拒んだのだ。
穏健派のハサン・ロウハニ大統領が地滑り的勝利で再選を果たしたことから明らかなように、ヨーロッパとイランの有権者には相違点より共通点の方が多い。どちらの有権者も選択肢には恵まれず、絵空事の選挙公約や庶民の生活には見向きもしない政治エリートに嫌気がさしていたが、だからといって自暴自棄な投票行動には出なかった。
昨年イギリスのEU離脱を決めた国民投票やドナルド・トランプを選んでしまった米大統領選は、有権者に大きな悔いを残した。既成政治家に対する怒りの意思表示として対立候補に票を投じたり、投票を棄権したりすれば、このような結果も招きかねない。極右を退け中道を選んだオランダやフランスはその教訓を生かした。イランの有権者も、同じ過ちを繰り返さないことを選んだ。
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だがトランプがイランについて話すのをを聞く限り、そんな実態はまるで伝わってこない。トランプは先週、初の外遊先に選んだサウジアラビアで、イランは地球上で最も悪意に満ちた脅威だと名指しで非難した。アルカイダやISIS(自称イスラム国)のイデオロギーがサウジアラビアで生まれたことを、トランプのスピーチライターは知らなかったのだろうか。
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予測不能のイラン政治
今のところ、イラン政府はトランプのイラン敵視政策を静観している。ロウハニは再選後初の記者会見で、米政権の内情が「落ち着く」まで、イランは対応を待つと述べた。その発言から、アメリカに今より穏健なイラン政策を形成してほしいというロウハニの期待が読み取れる。
イラン大統領選は、この国の政治が今も昔も「予測不能」の一言に尽きると改めて証明した。アメリカの外交筋も常々欲求不満を感じているところだが、イランの外交専門家の予測は手相占いと同じくらい当てにならない。当初はロウハニが再選し2期目(任期4年)を務めるのは楽勝というのが専門家の見方だった。
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そこへ大統領選への立候補を表明し、ロウハニの再選に黄色信号をともらせたのが、最高指導者アリ・ハメネイ師の有力後継候補と目される聖職者のイブラヒム・ライシ前検事総長と、上品な物腰で人気のテヘラン市長、モハンマド・バーゲル・ガリバフ市長だった。両者とも保守強硬派で、3回のテレビ討論会では、一般市民にとって経済が改善していないというロウハニの明らかな弱点を突いた。
選挙戦終盤にはガリバフが撤退を表明し、保守強硬派の票をライシに一本化するよう訴えた。その結果、独走状態だったロウハニに逆風が吹き始めた、と思われた。
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