最新記事

イラク

【マップ】ISIS掃討作戦、ファルージャ奪還後の攻略目標

2016年6月29日(水)16時30分
ジャック・ムーア

 マンビジの奪還に成功すれば、有志連合と地上部隊は次に、シリア最大のISIS拠点へと向かうことになるかもしれない。

「首都」ラッカ

 ファルージャやマンビジよりずっと困難な標的がシリアのラッカ。ISISの中心的拠点だ。初期にISISが制圧した都市のひとつであり、ISISは「首都」と称している。市街地で軍事パレードを行い、残忍な捕虜殺害場面を含むプロパガンダ映像も多くがここから発信。ISISの象徴ともなっているシリア東部の都市だ。

 有志連合は2014年9月から攻撃を加えており、多数の戦闘員が逃げ出してはいるが、今もISISの支配下にある。ISISによる制圧以来、市内に入れた地上部隊はまだないが、シリア政府軍はラッカ県にすでに進攻している。

 イラン・ロシア両政府が支援するシリアのバシャル・アサド大統領がラッカ市内に進軍する決断を下すのは、時間の問題かもしれない。その場合、有志連合とシリア民主軍に出番はなさそうだ。ただ、シリアとイラクでISISが「領土」を次々に失っていくなか、ラッカ奪還作戦は、有志連合にとってもシリア・イラン・ロシアの同盟にとっても魅力的なオプションになってくる。

【参考記事】独裁者アサドのシリア奪還を助けるロシアとイラン

イラク第2の都市モスル

 奪還すれば最大の成果となるのが、イラク北部の都市モスルだ。ISISの指導者アブ・バクル・アル・バグダディは、モスル近郊に潜んでいると考えられている。バグダディはモスルで自称「カリフ(預言者ムハンマドの後継者)」として最初の説教をしたとされる。

 人口100万人を超えるイラク第2の都市であり、ISISが実効支配する中で最大の都市だ。イラクの治安部隊が2014年6月に放棄して脱走して以来、スンニ派が多数を占めるモスルを、スンニ派主体のISISは比較的たやすく支配してきた。

 イラクのハイデル・アル・アバディ首相は26日、ファルージャを訪れ、モスルにもイラク国旗を掲げることを誓った。アバディは以前にも2016年末までのモスル奪還を宣言していたが、ラマディとファルージャでの成功を受け、モスル進攻はより時宜にかなったものになるだろうと米当局者は言う。

 イラク治安部隊は現在、モスルの75キロ南方の町マクムールに駐留している。クルド軍と米軍による空爆援護を受け、治安部隊は3月に、モスル周辺の村の奪還を開始した。有志連合によれば、モスル解放作戦の第1段階だ。次の段階はモスルの制圧だが、今年末までではなく、2017年のほうが現実的だと米軍は推測している。

 有志連合の当局者に取材を申し込んだが、コメントは得られなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中