――翻訳の難しさとは?
谷崎潤一郎の『武州公秘話』を訳して出版社に持って行った際、「こんな難解な翻訳では困る。やり直してほしい」と言われた。作品の中の戦国時代の日本語の会話を、チェコ語でそのように訳しただけだったのだが......。
谷崎の世界観を現代チェコ語で訳すのは本当に奇妙なことだと、担当編集者に何度も何度も説明したが、それを理解してもらうのは難しいと感じた。
これも『アステイオン』に書いたが、「自分の経験そのものはそうした経験をしたことがない人には決して伝えられるものではない」ということを身を持って実感した。しかし、個々の作品の世界観を読者に知ってもらうために、翻訳者は日本の伝統芸能のいうところでの「黒子」に徹さなくてならない。
――今後について。
現在、チェコ語に訳されている日本の作品はほんの一部にすぎない。いくつか日本文学の潮流があるが、そのなかでも内田百閒の作品は日本的な作品のひとつだと思っており、ぜひ翻訳したい。
日本文学は三島由紀夫や川端康成や村上春樹だけでなく、もっと幅広く、奥深さがあるものだと、翻訳を通して伝えることが私の役目だと考えている。
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