未来へ スティーブは世界と衝突しながら自分の居場所を探している
Shayne Laverdiere / © 2014 une filiale de Metafilms inc.
Shayne Laverdiere / © 2014 une filiale de Metafilms inc.
映像表現や音楽の使い方が効果的というのもあるかもしれない。ドランは本作で1対1という正方形の画面サイズを採用した。そうすると、登場人物に対してより視線がフォーカスされる。目が離せなくなる、と言ってもいい。物語としては暗く、不穏さの漂うものだが、やさしく温かい色調がかすかな希望を感じさせる。
音楽についてドランは、映画に合わせて流すのではなく、映画の中で流れているという感覚で作ったと言っている。確かにわざとらしさはなく、特に中盤で流れるオアシスの「ワンダーウォール」は印象的。主人公たちの世界が広がっていくこと(ある仕掛けによって、文字通り「広がる」のが面白い)を象徴し、忘れられない。
ダイアンやスティーブがちょっと騒々しいこと、近過ぎる母子の関係になじめない人もいるかもしれない。それでも一瞬流れる静寂の時や、未来を感じさせるラストにはそれを打ち消す力がある。やっぱりこの人には「スタイル」があるのだ。
ドランは、5月13日に開幕する今年のカンヌ映画祭で審査員を務めることになっている。もちろん史上最年少。「カナダの俊英」「映画界の救世主」「アンファン・テリブル(恐るべき子供)」と言われてきたドランは、さらに一段階進むところに来ているようだ。
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