ただ、カメラマンのエロルからは怒って電話が掛かってきたよ。「(映画祭の審査委員長である)ウォン・カーウァイ監督が見ると分かっていたら、あんな小さなカメラで撮らなかった!」って。ごく普通の市販のカメラで撮っているからね。
カーウァイの作品を見ている自分としては、彼がこういう映画に心を動かされるとは思っていなかった。だから受賞は嬉しい驚きだった。審査員と話す機会もあったが、みんなコンペティション部門で最初に見たこの映画を鮮やかに覚えていてくれた。
──ナジフは今どうしているのか。
この映画で彼はスターになった。女性誌の表紙を飾ったし、国中の人が彼を知っている。今は公園の清掃の仕事をしていて、生活環境はよくなった。仕事を得て、少しのお金と健康保険や社会保障なんかを手に入れて、ベルリンに旅することも出来た。彼の世界をちょっとは変えることができたのかな、と思う。
──次の作品『ホワイト・ライズ』はどんなものになりそうか。
それはトップシークレット。もし漏らしたら、あなたを抹消しなくてはならないから内緒だ(笑)
[2014年1月14日号掲載]
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