図2 サン=ボネ=ル=シャトー参事会聖堂低層部礼拝堂(筆者撮影)
フランス東南部、標高850メートルを超えるフォレズの山間に立つサン=ボネ=ル=シャトーの参事会聖堂(図1)。1400年に坂の斜面を利用した低層部礼拝堂が造られ、壁面には聖母とキリストの生涯に関連する十二の場面が描かれた(図2、トップページ写真)。
サン=ボネ=ル=シャトーの礼拝堂壁画には、二人の市民が礼拝堂設立に向けて尽力した経緯がラテン語の銘文で記されている。
その二人の市民の寄進に続いて、フォレズの支配者アンヌ・ドーフィヌが経済的支援を行ったことで、1417年頃に完成を見た。
天井部には、聖母信仰を持つアンヌ・ドーフィヌの夫ブルボン公ルイ二世を記念するため、ブルボン家の紋章と象徴図案、「聖母被昇天」のミサに捧げられた音楽と8つの楽器を手にする天使たちの姿が表されている (図4)。
《奏楽天使》に人物を結び付けるサン=ボネ=ル=シャトーの装飾プログラムに影響を与えたのが、ル・マン大聖堂聖母礼拝堂天井壁画 (1370~1378) である (図5)。
壁画の注文主である57代目大司教ゴンチエ・ド・ベニュの墓石彫刻がかつて収められていた礼拝堂の天井部には、54個の注文主の紋章に加え、47人の天使たちが当時実際に使用されていた24の楽器、聖母の祝祭日に歌われた聖歌を表すフィラクテールと写本を携えながら天を舞う。
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