他方、文系の場合、自分の中の「問い」から生まれた世界を書籍や文献、またはアンケート調査、インタビュー、フィールドワークなどから得られた文献やデータを利用し、それを整理して研究成果とする。つまり、得られた知見やデータから内容を精査して分析を行い、理論構築していくのだ。
そのため他者に報告する際には言葉が重要であり、しかも自分の言葉が必須となる。聴講者の受け取り方にずれが生じては、研究結果が正しく伝わらないからだ。
そして聴講者もまた自分の理解したことを自分なりの世界で整理し、研究者間の中で長期間にわたって整理され、それが新たな研究成果を生んでいく。
したがって研究発表とは、研究の過程で頭の中で整理したことを伝える場なのだ。すなわち「問い」に対して、理論を構築する比重が理系よりも圧倒的に多くなる。
もちろん、理系の中にもフィールドワークを主とする研究者もいる。また、数学研究者のように理論を構築していく研究スタイルもあるため、理系がすべて私のような研究者のスタイルというわけではないことは言い添えておく。
しかし、私のような工学系の研究者にとっては、文系の研究手法やプレゼンテーションのスタイルは斬新であった。
vol.100
毎年春・秋発行絶賛発売中
絶賛発売中