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※第1回:「日本の医療制度は「自由すぎる」、世界を変えたプライマリ・ケア改革とは」より続く
論壇誌『アステイオン』96号の特集「経済学の常識、世間の常識」をテーマに、6月に行われた井伊雅子・一橋大学教授、山脇岳志・スマートニュース メディア研究所 所長、土居丈朗・慶應義塾大学教授による座談会より。
土居 これまで経済記者として、経済政策がつくられるプロセスを取材されていた山脇さんのご経験から、政府と経済学者、メディアのかかわりについて、どう見えますか。
山脇 最近は経済分野の取材をしていないためよくわかりませんが、小泉政権の頃には、経済学者の政権への関与は大きかったように思います。その中心だった竹中平蔵さんがシンボリック過ぎて、小泉政権の政策はすべて「新自由主義」だという見方が広がったり、感情的な対立に結びついてしまったりすることも多く、本質的な議論をむしろ遠ざけてしまった気がします。
郵政事業の民営化は、小泉政権の大きな目玉でした。私自身はその頃、朝日新聞の論説委員で、郵政民営化に賛成でした。そもそも、朝日新聞は、小泉政権のずっと前から、郵政事業は民営化すべきという立場でした。自民党政権は長年、民営化反対だったので、そこを批判していたわけです。
小泉さんが首相になり、一転して、郵政民営化を推進し、選挙で郵政民営化が争点になったことで、「朝日新聞は、小泉政権を応援するのか。新自由主義だ」などと批判されました。
私たちは小泉さんのように郵政民営化でバラ色になるとは考えておらず、そう社説にも書きましたが、当時は「郵政民営化イコール新自由主義」のようにとらえられましたね。「新自由主義」かどうかではなく、政策本位で考えたときに、いつまでも国営だと弊害が大きいので、民営化に賛成したのですが。
土居 確かに、当時は「新自由主義」に対するそのような風潮と報道がありました。今も相変わらずの部分があります。では、経済学者は何をなすべきと思われますか。
山脇 井伊先生のご寄稿の中に、医療には情報の非対称性があって、情報不足の人が様々な不利益を被っていると書かれていました。
私自身、銀行や保険会社の金融商品のセールスの現場を取材する中で、「情報の非対称性」を利用した悪質なセールスの横行について調査報道を行いましたし、そうした金融セールスといった分野では、消費者を保護すべく規制を強化すべきだと考えます。
豊かで公平な社会を目指すためには、規制を強化すべき分野もあれば、規制を緩和すべき分野もあると思います。経済学者の方々には、その点を精緻に議論して、世の中に示していただきたいと思います。
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