『ポストモダンを超えて』を貫流する論題のひとつは、西洋起源の科学の知に対するに、東洋起源の何らかの知がありうるか否か、という問題である。普遍性に異常なまでの関心を示したのが西洋の特殊性であったという名言があるが、この問題の出し方そのものの歴史性をも考慮しなければならないだろう。解かれなければならない問題が網目状に広がってゆく本になってしまったが、それを利点にしてくれる読者の登場を待ちたい。
三浦 雅士(みうら まさし)
文芸評論家
21世紀日本の芸術と社会を考える研究会代表
ポストモダンを超えて:21世紀の芸術と社会を考える
編者 三浦雅士
著者 芳賀徹、高階秀爾、山崎正和、河本真里、岡田暁生
片山杜秀、齋藤希史、加藤徹、三浦篤
発行 平凡社
発行日 2016年3月18日(金)
目次
はじめに ポストモダンとアジア
芳賀徹、高階秀爾、山崎正和、三浦雅士
1 曙光と黄昏―モダンのリミットとしての抽象表現主義
報告者=河本真里
2 音楽論の現在―音楽学・音楽史・音楽批評
報告者=岡田暁生
3 連続と非連続―日本現代音楽史の欠落が意味するもの
報告者=片山杜秀
4 漢字圏とポストモダン―「表感文字」の時代へ
報告者=齋藤希史
5 京劇はポストモダン―二・五次元芸術という考え方
報告者=加藤徹
6 芸術、アート、イメージ―アナログとデジタルの狭間
報告者=三浦篤
まとめ 世界文明と日本文化―21世紀芸術の行方を探る
芳賀徹、高階秀爾、山崎正和、三浦雅士