「なぜ喫煙者は新型コロナウイルスに感染しにくいのか」 広島大が発見した意外なメカニズム

2021年11月8日(月)16時04分
谷本圭司(広島大学 原爆放射線医科学研究所 准教授) *PRESIDENT Onlineからの転載

最大の特徴は、新型コロナウイルスの感染受容体という「ドア」の数を減らすメカニズムを利用している点にあります。中和抗体など抗体を利用した薬の場合、特定のウイルスに対して効果を発揮するため、変異株などウイルス自体が変化してしまった場合、効果が低下する可能性があります。一方、この治療薬は、「ドア」自体を減らすため、たとえウイルスが変異しても対応することができるのです。

抗ウイルス薬との併用を想定

実際の使用にあたっては抗ウイルス薬との併用療法をイメージしています。「ドア」の数を減らすことでウイルス感染量は減らせても、感染してしまったウイルスの増幅は阻害できないからです。入ってくるウイルス量を減らせれば、抗ウイルス薬の投与量も減らせるため、副作用リスクの軽減が期待できます。

現在は、広島大学が主導する大規模な疫学研究プロジェクトにおいて、実際のコロナ患者で、胃潰瘍治療薬を使っている患者さんを対象に、感染率や重症化率の傾向、その他の有害事象などについて観察を行っています。今後は動物実験モデルなどを用いた評価を経て、臨床研究での効果評価へと進めたいと考えています。

(構成=梅澤 聡)

谷本圭司(たにもと・けいじ)

広島大学 原爆放射線医科学研究所 准教授
1970年広島県広島市生まれ。1994年広島大学歯学部卒業、1998年同大学大学院歯学研究科にて博士(歯学)取得。埼玉県立がんセンターに研究生として勤務後、スウェーデン王立カロリンスカ研究所ノーベル医学研究所へ留学し、日本学術振興会特別研究員を経て、現在の研究の基盤を作る。2020年より現職。低酸素環境下における防御反応の研究を行う。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら




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