タリバン政権復活、バイデンが検討すべきだった1つのこと

2021年8月16日(月)16時10分
フレッド・カプラン(スレート誌コラムニスト)

テロ組織の温床となっている国境地帯のパキスタン側でタリバンの旗を振る人々(チャマン、7月14日) ABDUL KHALIQ ACHAKZAIーREUTERS

問題はほかにもある。政府軍よりもタリバンのほうが、自分たちの大義に情熱を感じていて、そのために戦う決意が固い。

これに対して、政府軍の兵士をはじめとする庶民の多くは、タリバンを憎み、恐れてはいるものの、政府に愛や忠誠心を抱いていない。

一部残留の選択肢は排除

2010年にバラク・オバマ米大統領(当時)がアフガニスタンへの増派を進めたとき、米軍幹部は、アフガニスタン政府の腐敗を一掃しない限り、増派の効果は乏しいと警告した。だが、腐敗問題はほぼ放置された。そしてタリバンは、腐敗した政府に対する庶民の怒りを利用した。

ジョー・バイデン米大統領が4月に、アフガニスタン駐留米軍を9月11日(後に8月末)までに完全撤収させると発表したのは、あまりにも突然で、間違いだったのか。

アメリカはもう十分長いことアフガニスタンにいたと、バイデンは説明した。

米同時多発テロの首謀者であるウサマ・ビンラディンを殺害し、アルカイダを討伐するという当初のミッションは、とうに達成された。それ以外の、国家建設などの目標は夢物語にすぎない。長年支援してもまだ政府軍が自力で戦えないなら、永遠に無理だろう。だから今、撤退しよう、と。

これらの指摘はどれも正しい。だが、バイデンが1つだけ検討しなかったことがある。それは米兵の一部残留だ。

オバマ政権は迷走の末にこれをやった。増派から1年半たっても、反政府組織の討伐がうまくいっていないと気付くと、オバマは米軍の撤収を決めた。ただし土壇場になって、全員ではなく、5500人は残すことにした。

理由は2つある。

まず、アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領(当時)が、2国間安全保障合意に署名して、米兵の法的保護を約束した。

一方、アフガニスタンとパキスタンの国境地帯は、昔からテロ組織の温床となっていた。パキスタンは核保有国であり、その動向に目を光らせておくべき理由はたくさんある。するとガニが、3つの軍事基地を米軍が使っていいと提案した。だからオバマは、戦闘への関与を大幅に減らしつつ、限定的な数の兵士を留め置くことにしたのだ。

たとえ限定的でも、米兵のプレゼンスは、タリバンを遠ざけ、女性の権利など市民社会の片鱗を守ることができた(米ドルの流入はエリート層の腐敗を維持する働きもしたが、この問題は別の機会に論じることにしよう)。

バイデンも同じことができたはずだった。それも、もっと少ない兵力を維持し、もっと戦闘への関与を減らして。

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