コロナ第2波も即座に封じ込め成功の台湾、見習うことしかないその対応
しかし海外から戻った台湾人や在留外国人などから、屋内活動の規制を促す声が増えると、多くの自治体が店内での飲食を禁じ、屋内活動を制限した。こうした規制のおかげで、台北から地方都市への感染拡大が抑えられた。
感染者数が減少するにつれて中央政府は規制を解除していったが、一部の自治体は有権者からの批判を恐れて、店内での飲食に対する規制を今も続けている。
さらに与党・民進党は、中国本土の企業を経由してドイツのビオンテック製ワクチンを購入するという親中的な実業家(野党・国民党寄りの人物)の提案を受け入れた。ワクチンの確保を望む住民の声が、党派政治の壁を乗り越えたのである。
第3は、有権者が以前から疫病対策に敏感で、政治家の責任を厳しく追及してきたという事実。狭くて人口密度の高い島だから、感染症の水際対策は死活問題だ。2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)流行時には、当時の政府に批判が集中した。
今回も、最大都市・台北の市長で外科医でもある柯文哲(コー・ウェンチョー)がメディアや世論の集中攻撃を浴びている。柯は感染拡大の予防に必要な各種の措置を軽視し、ワクチン接種の体制づくりでも遅れを取り、揚げ句に今回の市中感染の拡大を防げなかった責任を他人に押し付けているとされる。
結果、柯の新型コロナ対策についての支持率は、この1カ月で7%近くも下落。やむなく柯は台湾CDC(疾病対策センター)による支援の受け入れに同意したのだった。
メディアが率先して示した手本
第4は、1990年代以降の民主化で力をつけた台湾メディアの存在だ。体制批判を恐れぬ台湾メディアは今回、新型コロナ感染症に関する最新の情報を、競って市民に提供してきた。一部にワクチンの副反応を誇張する報道があり、それでワクチン忌避の風潮が広まった事実はあるが、総じて主要メディアは適切な報道姿勢を貫いている。
ニュース番組や人気のワイドショーなども、ほとんどはリモート出演による放送に移行し、やむを得ない場合も出演者にはマスクの着用とソーシャルディスタンスの維持を徹底した。そうやってメディアが率先して手本を示したから、感染予防のメッセージが視聴者に的確に伝わった。
そして最後に、台湾が昨年段階から国際社会に善意を示してきた事実がある。だから今年5月の感染急増時に温かい支援を受けられた。台湾は昨年、諸外国に5100万枚超のマスクを寄付している。それで助かった諸国が、今回は率先して台湾にワクチンを回してくれた。