インドの庶民を激怒させたビル・ゲイツ...大富豪はこの国に何をした?

2021年7月1日(木)20時25分
アクシャイ・タルフェ

<コロナ感染爆発の国で怪しげな臨床試験を実施。ワクチン生産大国で接種が滞るなか希代のIT長者が批判の矢面に>

突然の離婚発表とその後の不倫疑惑でビル・ゲイツが世界中を騒がせたのは去る5月のこと。しかしインドではずっと前から、全く別な理由でビル・ゲイツと(蜜月時代に妻メリンダと立ち上げた)ゲイツ財団の評判はすこぶる悪い。

今のインドにはツイッターで「#ビル・ゲイツを逮捕せよ」と気勢を上げる市民がたくさんいる。慈善団体であるはずのビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団がインド国内で、こともあろうに医療倫理に反する違法行為を働いた疑いがあるからだ。

国内の2州で、少数民族の子供らを違法な臨床試験に使っていたと訴えられているのだが、なぜか司法当局の動きは鈍い。

ビル・ゲイツとその財団がインド国民の怒りを買うのはこれが初めてではない。むしろ、積もり積もった市民の怒りが爆発したとみていい。

今年4月には、新型コロナウイルスのワクチン技術をインドのような途上国と共有することに否定的な見解をゲイツが述べ、たちまち非難の渦に巻き込まれた。すぐに世界中の識者や関係団体からも批判の声が上がり、財団の運営責任者であるマーク・スズマンは一転して、ワクチン特許の一時的な停止を支持すると表明せざるを得なかった。

モディ政権と二人三脚

インドでは多くの農民が昨年9月に成立した農業改革法に猛反発しているが、そこでもゲイツは厳しく批判されている。一連の「改革」を主導するのはヒンドゥー教至上主義を掲げる現政権だが、ゲイツは露骨に政権に肩入れしているように見える。

だからヒンドゥー語の有力紙ダイニク・ジャグランによれば、農民たちは抗議集会でゲイツに似せた人形を燃やしている。

農業団体や活動家たちによれば、問題の「2020年農産物流通促進法」によって、マイクロソフトの現地法人マイクロソフト・インディアは不当な利益を得る可能性がある。なぜか。

同社とインド連邦政府の農務省が交わした覚書によれば、同社は約5000万のインド農民とその農地に関する公的記録のデータにアクセスできることになるからだ。ちなみにゲイツ財団はインド各地で、農業関連の事業にも関与している。

同国のナレンドラ・モディ首相とビル・ゲイツ(とその財団)が親密な関係にあるのは周知の事実。一昨年9月には同財団がモディに「グローバル・ゴールキーパー」賞を贈っている。途上国における衛生環境の改善に尽力した国家指導者をたたえる賞だが、授賞理由には過去5年間で1億台以上の公衆トイレを設置した「クリーン・インディア」計画が挙げられていた。

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