アフガンの戦場から米兵が去った後、殺人マシンによる「永続戦争」が残る

2021年4月20日(火)18時58分
ウィリアム・アーキン(ジャーナリスト、元陸軍情報分析官)

こういう全世界的な展開において地上部隊の兵力は微々たる存在ということになる。アメリカの新しい戦争のやり方とは、米軍人と民間企業の関係者が米国内各地の自宅から出勤し、勤務先から遠く離れた世界のどこかの「戦争に行き」、空爆と殺害を終えたら帰宅することなのだ。

ソレイマニ殺害もそうだった。アルカイダ幹部の殺害でこのやり方が採用されて以来、アメリカは過激派組織「イスラム国」(IS)との戦いでも特定の個人を標的とする攻撃を繰り返してきた。

今やアフガニスタン、イラク、シリアのごく一部を除いたら、地上でリアルな戦闘に従事している軍隊は存在しない。そもそも地上の肉弾戦には興味も関心もない。

アメリカはテロ勢力と接近戦を演じることに乗り気でない。そういう伝統的な戦闘を担うのはクルド人など現地の「パートナー」の役目だ。世界中にネットワークを張り巡らして人類史上最高の情報を確保したアメリカは、遠い所で誰かのために人を殺すことに手を貸す役回りとなった。

戦争マシンが目指すのは標的となる個人を見つけて殺すことであり、標的は「価値が高い」ほど良い。標的を定めることこそがアメリカの世界展開の核心となる。標的とする国や組織が変わっても、ほとんど遅滞なく対応できる。

言葉の壁は高いまま

さらには言葉や文化にも制約を受けなくなってきた。3大陸21カ国を戦地として何十ものテロ組織に立ち向かう今は、ナイアガラの滝のようになだれ込む情報の処理には機械翻訳やビッグデータ解析が用いられることが多い。

こうして人工知能(AI)の活躍する場面は増えたが、一方でアナログ面の問題は解決されていない。9.11テロから20年過ぎた今なお、実働部隊には言語の専門家が足りていない。だから翻訳などは外注せざるを得ない。

国や地域の専門家も恐ろしく不足している。現地で頼れるような事情通や地域の専門部隊を育成する努力を重ねてきたアフガニスタンですら、兵士3人当たりに通訳1人しか雇っていない。

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