アフガンの戦場から米兵が去った後、殺人マシンによる「永続戦争」が残る

2021年4月20日(火)18時58分
ウィリアム・アーキン(ジャーナリスト、元陸軍情報分析官)

アフガニスタン駐留中に路上の爆弾で死亡した米軍兵士の葬儀 JEENAH MOONーREUTERS


重要な航空作戦を担う中核の施設はペルシャ湾岸の小国カタールに位置する。陸軍のハブはクウェート、海軍のハブはバーレーンだ。

実際の空爆や殺害が行われるのは、このハブ・アンド・スポーク方式でスポークが延びた先端部分でのこと。そこでは必ずアフガニスタンと同じことが行われている。

現地には正規の部隊と非正規の部隊がいて、たいていは正規の兵士より民間の請負業者が多い。彼らは人知れず「目立たない」活動に従事しており、殺人攻撃の大半は国外から実施される。

司令部は中東の同盟国に

任務として取り組む課題は多岐にわたる。国際的な組織犯罪、大量破壊兵器の拡散、長距離ミサイルや攻撃ドローン対策、サイバー戦、海賊、不法移民......などだ。これだけ網羅すれば、ほぼどこでも戦争に従事することを正当化できる。

ハブと無数のスポークは地上とネット上、そして宇宙空間にも及ぶネットワークを形成している。それは世界規模の監視・情報マシンであり、「前方」にいる全ての人を結び、最終的には後方、つまり米国内の基地につながる。スポークの先端にいるのはごく少数の人だが、この先端部は恐ろしく精密かつ柔軟な攻撃能力を持つ。傍受した情報に基づいてドローンを飛ばすにしても、今日はシリア、明日はリビア、その次の日はソマリア、ナイジェリアという具合に東奔西走できる。

その最たる例が昨年の無人機によるイラン革命防衛隊の司令官ガセム・ソレイマニ殺害だった。イラクのバグダッドで実行に移されたこの作戦は、アメリカの戦争マシンによる見事な出来栄えの作品だった。当時のトランプ政権は作戦を実施すべきか否かを検討するのみで、成功率を問う必要はなかった。すっかりお膳立てができていたからだ。

表には出ないが、作戦には多数の制服組、民間人、企業が関わっていた。ソレイマニの移動経路を突き止め、関係者間の連絡内容を把握し、衛星通信のタイミングやパイロットの勤務体制を調整し、監視飛行の準備を整え、爆弾を機体に搭載し、作戦行動の時間を調整し、航空管制と複雑な段取りを整えた上で、通過する空域の許可を得るために各国政府に連絡もした。

さらに何千人もの人々が前線にいる少数の者のために、司令部で通信と連絡網を支えていた。彼らはグラフィックの作成、上層部向けの説明資料の用意、刻々と変化する最新情報の提供をしていた。イラクや湾岸諸国にある基地だけではない。米軍の意思決定の場はフロリダ州にあり、通信傍受と翻訳を主に引き受ける施設はジョージア州に、航空作戦を監督する場所はサウスカロライナ州に、偵察資料をダウンロードして分析する施設はワシントン首都圏にある。その全てが作戦に参加し、支えていた。

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