海に沈んだ古代文明? 沖縄の巨大海底ピラミッド、地質学者たちの議論の的に

2021年3月30日(火)17時00分
青葉やまと

教授は米ナショナル・ジオグラフィック誌に対し、巨大な一枚岩を利用した海底遺跡の構造が、世界各地の古代文明に見られる階段ピラミッドに類似していると説明している。

また、石を切り出した際の加工痕が広い範囲に渡って見られるとも教授は指摘する。ピラミッド上部には亀を模して加工したと見られる星形の岩が確認されており、構造物の一部にはかつて与那国島などで利用されていた象形文字の一種である「カイダ文字」に似た文様が彫り込まれているなど、人の手で加工された痕跡が多数見られるという。

教授の見立てによると、この場所はかつての神殿であり、それを築いた文明は中国大陸ないしは昔の沖縄の王と何らかの繋がりがあったはずだという。与那国島については1771年の4月、40メートルを超える津波に襲われたことが判明している。この津波が、かかる文明を滅亡に導いた可能性がある。

構造物が沈む一帯には、ほかにも都市の痕跡と思しきものが点在する。城、アーチ状の門、5つの寺院、広大なスタジアムがあり、それぞれが道で結ばれているほか、一部は擁壁のようなものに囲まれている。成熟した文明の遺構を思わせる造りだ。

文明説に反論 自然現象が生んだ希少な地形か

滅亡した文明の拠点であったとする説が人々を魅了する一方、自然の力が悠久の時を経て作り上げた形状だとする説もある。今日では、こうした見方が優勢だ。

大きな根拠となるのが、この構造物がすべて一枚岩で構成される点だ。周辺では地震活動が活発であることから、岩盤の動きに伴って海底が隆起し、徐々に階段状の地形が形成されたと見ることができる。

また、地質学の分野では、砂岩は直線状に割れやすいという特性がよく知られている。直角を組み合わせたような形状は、こうした自然現象が生み出した珍しい地形として説明可能だ。表面の加工痕については、水中の渦または生物の活動によって発生したものと考える学者が多い。

とはいえ、仮にこのように天然由来の地形であったとしても、文明説が必ずしも否定されるわけではない。ボストン大学の自然科学准教授であるロバート・ショック博士は、ニュース・コム・エーユーに対し、「ヨナグニ・モニュメント(海底遺跡)が元々は自然の構造物であり、その後で往古の人々によって利用され、拡張され、手を加えられた可能性も考慮すべきだ」とコメントしている。

ショック博士が指摘するように、その神秘的な地形が古代の人々を惹き寄せ、何らかの活動の場として利用されていた可能性は十分に考えられるだろう。

今日では海底遺跡一帯は、神秘的な姿を一目見ようと訪れるダイバーたちで賑わう。その成り立ちを謎のベールに包んだまま、澄んだ水底にミステリアスな威容を誇っている。

●参考記事
津波で沈んだ古代ローマの都市を発見
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