全米各地のコロナウイルス検査に滞り 「高度な自動化」が裏目に
単純明快な解決策は見当たらず
新型コロナのパンデミック(世界的な大流行)初期、検査のやり方はどこの国でも似たようなものだった。研究所の職員が機器を使って遺伝子材料を抽出し、別の機器に移してウイルスを確認する。だが、こうした検査は手間がかかり、技術的な熟練を必要とした。
現在、米国の研究所の多くは、高度に自動化された「検体抽出から結果まで」式の分析機器に頼っている。だが一部の専門家によれば、標準化された試薬やパーツがないため、こうしたやり方が不適切であることが分かったという。
クリーブランド・クリニックが運営する複数の研究所の運営を支援するゲイリー・プロコップ氏によれば、政府が国防生産法(DPA)を発動し、疾病予防管理センター(CDC)が出している既存のマニュアルを利用すれば、従来の検査を拡充することもできたはずだと話す。
プロコップ氏は、CDCのマニュアルに準じた検査について、「しっかり標準化された試薬を使っている」と指摘する。「やろうと思えば、企業に頼らずに済む。その種の検査キットなら実際に大量生産できる。だが、誰もそれをやろうとしない」
米保健福祉省がロイターに述べたところでは、連邦政府はDPAを発動して一部の検査用サプライ品を調達したが、CDC推奨の検査に使われる試薬はすでに出回っており、調達を増やす意味はないという。
保健福祉省のミア・ヘック報道官は「サプライチェーンの改善、障壁の解消に向けて企業各社と直接協力し、DPAを通じて投資を行った結果、この秋には、各自動検査のプラットフォームの供給は拡大すると予想される」との見解を示した。
世界で1600万人以上が感染、64万人以上が死亡するという100年に1度のレベルのパンデミックにおいて、検査に関して単純明快な答えはない、と医療専門家は指摘する。
中国では、試薬などを節約するために複数の患者の検体を混合することで、6月には数百万人の北京市民の検査を実現し、感染拡大の再発を抑え込んだ。だが複数の専門家は、この方法では偽陰性が増加する恐れがあり、また感染が拡大している状況では非効率であると警告する。
カナダは従来型の複数ステップ検査で用いられる試薬について国内のサプライチェーンを構築し、ほとんどの患者について2─3日で検査結果が出るようになった。だがこの体制は、米国に比べて人口がかなり少ない国でこそ有効になる。
ワシントン大学医学臨床ウイルス学研究所のアレックス・グレニンガー副所長は、「1日1000件以上の検体を処理するよう求められる場合、あるいは現在の我々のように1日4000件を超える場合には、検査の一部は、『検体投入から結果まで』式の自動検査機に頼らざるを得ない」と話す。