全米各地のコロナウイルス検査に滞り 「高度な自動化」が裏目に
米国の新型コロナウイルスの検査能力は、世界的にみてどこにも劣らぬ能力を持っているはずだった。しかし、各地の研究所では処理が滞り、多くの患者が判定が出るまでに1週間、あるいはそれ以上待たされる事態が再び生じている。
この危機の根底には、公的、民間を問わず研究所が自動検査機に依存しており、その専用試薬キットやツールを使わざるを得ないという事情がある。そうしたキットやツールを製造しているのは、ごく少数のメーカーに限られている。
ロイターは16の病院や大学の付属研究機関に取材、州や市の調達計画を分析。全国的に感染率が上昇する一方、試薬キットなどの供給体制にボトルネックがあるため、多くの研究所で検査体制がフル稼働に遠く及ばない状態にあることが明らかになった。
この市場を支配しているのは、セファイド、ホロジック、ロシュ、アボット・ラボラトリーズといったひと握りの企業だ。こうした企業の自動検査機は、各社専用の試薬キットや検体プレート、ピペットなどの使い捨てプラスチックパーツがなければ役に立たない。プリンターの専用インクカートリッジのようなものだ。
ワシントン大学の医学研究所の責任者であるジェフリー・ベアド氏は、「メーカー各社は今まさに、2つ返事では注文に応じられない極めて難しい状況に置かれている」と話す。
「COVIDトラッキング・プロジェクト」によれば、米国内の研究所では1日約80万件の検査が行われている。だが各種試算によると、現在必要とされる検査件数は1日600万─1000万件だ。
連邦議会は検査拡充を支援するため110億ドル(約1兆2000億円)の予算を配分した。また5月には、各州が連邦政府に対し、購入予定の機器などを記載した計画を提出した。
だがロイターの分析によれば、各州の計画を総合すると、公衆衛生当局者たちは根底にあるサプライチェーンの問題には対処していないことが分かる。
多くの州では自動検査機の追加購入を計画しているが、そのメーカーはわずか2社である。しかも、試薬やパーツの不足により、他州ではすでに同機種が十分に稼働していない、あるいは休止状態にある。
中国やカナダなど他国では、サプライ品の不足による制約はこれほどひどくない。これらの国では自動検査機の利用が少なく、サプライ品の調達という点で柔軟性が得られているためだ。
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