新型コロナと芸術支援──継続、再開の先にあるアートの可能性を信じて

2020年6月12日(金)11時45分
吉本 光宏(ニッセイ基礎研究所)

次に必要になるのが、ニューノーマル、ウィズコロナと言われる環境下で、芸術活動や文化事業を再スタートさせ、実施していくために必要な(2)の支援である。劇場を例に考えると、施設や設備の感染対策には相応の費用が必要となるし、ソーシャルディスタンスを保った状態で公演を行うためには、定員の2割から3割程度の観客を入れるのが精一杯ではないだろうか。当然、従来と同様のチケット収入を得るのは不可能だ。

ニューノーマルの環境下で文化事業を実施するために要する追加的経費をまかない、収入不足を補う支援について、知恵を絞り、準備する必要がある。緊急事態宣言が解除されたことを考えると、これからはこの(2)の支援へのニーズが高まっていくだろう。

そして、筆者が最も必要だと思うのは、(3)を視野に入れた長期的な支援である。中止、延期になった公演や展覧会、アートプロジェクトなどをどのように再開するか。当面はそれが重要な課題であるし、そのための支援も長期にわたって必要だと考えられる。

しかし、新型コロナウィルスによって、これまでの社会の仕組みや人々の考え方が大きく変わる中、芸術のありようや社会的な役割にも、大きな変容と進化が求められることは間違いない。歴史的な転換点に芸術は何を表現し、社会に何を訴えることができるのか。活動の自粛を余儀なくされ、自宅に籠もって生き延びる術を模索しながらも、そう問い続けるアーティストは少なくないはずだ。

20世紀後半に急速に進展したグローバリズムによって、日本をはじめとした先進国は経済的な恩恵に浴してきた。しかし、そのことが新型コロナウィルスの世界的パンデミックを加速させたことは間違いない。近年、世界の大国は自国第一主義に傾き、英国のEU離脱や米中の対立など、世界的な分断が進む中で、新型コロナウィルスは発生し、猛威を振るう。

国境を越える移動が厳しく制限される一方で、新型コロナウィルスに対処するため、国際的な連帯(Solidarity)の必要性を訴える動きも広がっている。筆者も創設メンバーの1人を務めるWorld Cities Culture Forumでは、理事長のジャスティーン・サイモンズロンドン市副市長の呼びかけで、世界の約30の主要都市が参加し、ZOOMを使った情報共有と意見交換が3月下旬から何度となく行われている。

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