現代ヨーロッパの礎「平和、人権、統合」の3つの価値観が崩壊する
「ポスト89年」のヨーロッパが機能不全に陥っているのは、中欧や東欧が西欧を模倣しなくなったからであり、自国を西欧に判断されることも拒んでいるからだ。彼らはむしろ西欧に対抗するようなモデルをつくりたがっている。
ヨーロッパの度重なる機能不全は、決定的な崩壊を意味するのか。運命と決め付けるのは間違いだろう。それが意味するのは、ヨーロッパはアメリカに安全保障を頼ることを当然視せず、自国の軍備に投資すべきだということだ。
それはまた70~80年代のヨーロッパの自由民主主義が極左勢力に急進的な立場を放棄させ、彼らの正当な要求のみを主流の思想に統合したのと同じように、極右勢力の思想の一部を主流派に統合すべきことも意味する。
いま極右勢力の過激な思想を恐れている人々は、70年代に多くの中道派が、後にドイツの外相となったヨシュカ・フィッシャーのような反体制の左派を敵視したことを思い出すべきだ。
東西ヨーロッパの関係で重要な課題は何か。それは、西欧を模倣することが唯一の民主主義の意味だと主張したり、EUの「結束基金」で民主主義への献身を買えると無邪気に思い込んだりせずに、東欧の独裁主義への傾倒を糾弾する方法を見つけることだろう。
70年前、ヨーロッパは第二次大戦による破壊を平和プロジェクトの基礎に変えることに奇跡的に成功した。68年には、体制への怒りを政治的な進歩に転換することにも成功した。
50年にわたる冷戦で分断されたヨーロッパを再び団結させるという大仕事は、20年足らずで実現できた。かつて多くの失敗から成功を導き出したヨーロッパは、再び同じ奇跡を成し遂げられるはずだ。
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