中国人コスプレイヤー、同人誌作家、買い物客はこんな人たち(コミケ97ルポ)

2020年2月1日(土)19時45分
高口康太(ジャーナリスト)

人気のゲーム会社Yostarのブースでは、日中混合の女性レイヤーたちがポーズを決めていた。新作ゲーム『アークナイツ』の宣伝だ。その効果は抜群で多くの人が集まっていた。

人気のゲーム会社Yostarのブースでは、新作ゲーム『アークナイツ』の宣伝を日中混合の女性レイヤーたちが盛り上げていた HAJIME KIMURA FOR NEWSWEEK JAPAN

集まったファンたちは皆、ハイエンドのデジタル一眼レフを握っている。「プロ以上の機材かも」と、同行したプロカメラマンの木村肇が舌を巻く。

カメラを取り囲むように、フライパンぐらいの小さなディフューザー(照明機材の一種)が取り付けられている。丸いディフューザーを構える姿はまるでファンタジーRPGの戦士のように見えた。

その戦士たちに取り囲まれていた中国人レイヤーが、なつめと黒沢の2人。共に江蘇省からやって来た。

なつめはプロのレイヤーで、コミケの参加ももう3回目。中国各地のイベントに呼ばれたり、ゲーム関連の動画や写真に出演したりと忙しい日々だという。

黒沢は副業レイヤーで、本業はアニメ会社で働くグラフィックデザイナーだ。アニメも好きだが、日本カルチャーにはまったのはアイドルグループ「嵐」がきっかけだという。語学学校に通って日本語も覚えるほど入れ込んでいる。

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初めて参加したコミケの感想を聞くと、こんな答えが返ってきた。

「中国だとコスプレしてます、アニメ好きですって人に言うのが恥ずかしくて隠してたけど、日本はさすが母国だなって。こんなに多くの人がアニメ好きを堂々と表明しているなんて。日本すごい!」

コミケ会場だけ見ると確かにそういう印象になるかもしれないが、さてどうなのだろうか。例えば、ユニクロの漫画・アニメTシャツをとっても、街中でこれを着て歩いている人は中国のほうが多いような気がするのだが。

『中国ラノベ史』『中華オタク用語辞典』――同人誌制作者たち

参加者、コスプレイヤーときて、最後に紹介するのが同人誌制作者の中国人たち。ケン・リーは上海出身、日本の大学で学ぶ留学生だ。

隣り合った出展ブースで自ら作成した同人誌などを売るケン・リー(左)と八子 HAJIME KIMURA FOR NEWSWEEK JAPAN

「中国のオタクに関する情報は日本でも結構紹介されるようになってきたが、ほとんどはアニメ関連だ。特撮とかライトノベルとか、アニメに比べれば数は少なくても、そういうジャンルを好きな中国人オタクもいるぞと伝えないといけない。そう思って同人誌を作るようになった」

今回で6回目の参加というケン・リー HAJIME KIMURA FOR NEWSWEEK JAPAN

彼の出展ブースには、彼が作った『中国ラノベ史 中国のライトノベル市場から見る中国オタク事情』『中国特撮事典』などの同人誌が並ぶ。今回で6回目の参加となるが、そのたびにコンスタントに新刊を出してきた。頭が下がる勤勉っぷりだ。

「同人誌だけじゃなくて、卒論も中国アニメの歴史で書くことになった。経済学部なんですけどね(笑)」

「ラノベ」「アニメ」といった文字が躍るケン・リーの同人誌 HAJIME KIMURA FOR NEWSWEEK JAPAN

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