中国人コスプレイヤー、同人誌作家、買い物客はこんな人たち(コミケ97ルポ)

2020年2月1日(土)19時45分
高口康太(ジャーナリスト)

徐の語りは延々と続く。その徐と一緒に行動していたのが浙江省出身の馮(フォン)。昨春来日し、現在は東京の日本語学校に通っている。

「買い物よりも雰囲気を感じたいと思っている。まあ、気になるグッズがあるとすぐ買ってしまうんだけど(笑)」

日本に留学した理由を聞くと、「中国の近くにある、存在感のある外国というと日本になる。日本のカルチャーが好きだからというのも理由の1つ。アニメだけじゃなくて、日本の推理小説もよく読んでいる」。

12月の東京で肩と胸を大きく露出して寒そうだったが......

コミケと言えば、同人誌やグッズの頒布と並んで目玉となるのがコスプレだ。コスプレイヤー(レイヤーとも呼ばれる)が集まる屋上展示場で出会ったのが、大学院に留学中の羅老実(ルオ・ラオシー)だった。女性2人と一緒にコミケを見学に来たという。

大学院に留学中の羅老実(右端) HAJIME KIMURA FOR NEWSWEEK JAPAN

中国には「看熱閙」(賑わいを見に行く)という言葉があるが、なるほど14億人の人口大国・中国でも、これほど人がぎゅうぎゅうになる光景はまれだ。さまざまなコスチュームに身をまとうレイヤーを見ているだけで楽しいのだとか。

そして、実はコスプレをする側にも中国人は少なくない。中国ではアニメ・漫画産業育成の名の下、政府主催のコスプレ大会が開催され、大学にはコスプレサークルが設立されるという、日本人からすると不思議なお国柄がある。

さらに、イベントコンパニオンをしたり撮影会で稼いだりと、プロへの道も確立している。容姿端麗な男女が続々参加し、ハイレベルになっているのも分かろうというものだ。

女性レイヤーの愛老師は浙江省杭州市の大学3年生 HAJIME KIMURA FOR NEWSWEEK JAPAN

屋上展示場にいた女性レイヤー、愛老師(アイラオシー)に話を聞く。浙江省杭州市の大学3年生だ。もともとアニメ好きだったというが、高校時代にコスプレサークルに加入したことをきっかけにレイヤーになった。

中国のコスプレイベントには何度も参加しているが、日本のコミケは今回が初めて。東京にある中国人レイヤーの仲介事務所が招聘した。まず今回はコミケの参加者に知ってもらって、将来的なステップアップを目指す戦略なのだとか。

12月の東京で、肩と胸を大きく露出したコスチュームはいかにも寒そうだったが、多くの人に見てもらってファンになってもらいたいと意気込んでいた。

カメラを構えたファンたちはまるでファンタジーRPGの戦士

個人が出展するエリアと別に設けられた企業ブース。そこにはプロとして活躍する中国人レイヤーたちの姿があった。「はじめまして~」と日本語で挨拶してくれたのは上海から遠征してきた千葉チュチュ。大学を卒業したばかりの社会人だ。

日本人レイヤー(左)と上海から遠征してきた千葉チュチュ(右)が並んで撮影に応じる HAJIME KIMURA FOR NEWSWEEK JAPAN

日本語をきちんと学んだことはなく、10年以上アニメを見ているうちに覚えてしまったのだとか。それだけに日本語のイントネーションは、アニメのキャラクターっぽい。コスプレと相まって本当にアニメから抜け出てきたようだ。

「コミケもすごい人だけど~上海にもコミックアップっていう大きなイベントがあって大混雑ですよ~。違いは......日本だと会場に来てからコスプレするけど~上海だとみんなコスプレの格好で会場まで行くの~。だから一番の違いはみんなの格好かな」

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