プレゼンは緊張したほうがいい、人前で話すのに恐怖を感じるのは当然だ
<欧米のプレゼンの名手たちも、緊張はする。自然なことだし、緊張はプラスに働きうるのだと、5000回以上のプレゼン経験を持つ米ノースウェスタン大学のティム・カルキンス教授は言う>
米ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院のティム・カルキンス教授が、専門のマーケティング戦略ではなく、プレゼンの本を書いてアメリカでベストセラーとなっている。優秀な教え子たちがプレゼンで失敗していることを憂いたのが執筆の動機だったという。
カルキンス教授が8歳で行った初めてのプレゼン「ニワトリをどう洗うか?」から始まる本書は、相手(聞き手)の見定め方からストーリー・構成、データの使い方、そもそもプレゼンをする必要があるのか否かということまで、プレゼンを成功させるためのコツを詳しく解説したもの。
「プレゼンに秘訣などない。必要なスキルはシンプルで、成功へのカギもはっきりしている。問題点は簡単に特定、修正ができる」と、5000回以上のプレゼンをこなしてきたカルキンス教授は言う。
その邦訳『ニワトリをどう洗うか? 実践・最強のプレゼンテーション理論』(CCCメディアハウス)から、ここでは自信をもってプレゼンする方法を抜粋する。
プレゼンに苦手意識を持つ理由として、「緊張」を挙げる人は多いかもしれない。だが心配はいらない。本書によれば「緊張したほうがいい」のだ。
※カルキンス少年の「ニワトリ」プレゼンについては、本書からの抜粋第1回:名門MBAケロッグの名物教授、初めてのプレゼンは「ニワトリの洗い方」だったを参照。
ほとんどの人はプレゼンで緊張するが、実は緊張するべきなのだ。大勢の人の前に立つのは平然とできることではない。全員の視線があなたに向けられる。これでうまくできるのかとプレッシャーがかかる。「ほとんどの恐怖症と異なり、人前で話すのを恐れるのは至極当然のことだ」と、ルーシー・ケラウェイは言っている。
経営コンサルタントで講演家のスコット・バークンは、プレゼンで緊張を感じることは人間の性質と深い関係があると指摘している。
「私たちの脳は、隠れる場所がないオープンな空間で武器を持たず、たくさんの目が自分を見つめるなかで独り立つことに、恐怖を感じるようにできている」
私は20年間、ビジネススクールで講義をしている。合計で4000回以上、授業をしている。これだけ長い時間を教室で過ごしていながら、いまだに授業の前には緊張する。
まず、緊張するのは自然なことだとわきまえることだ。緊張しないでプレゼンをしようなどと思ってはいけない。広告代理店の経営トップであるキャリー・レムコウィッツは、「緊張するな!」と言うのは世界一ひどいアドバイスかもしれないと言っている。
「『緊張するな』などと言えば、相手を動揺させてしまう」
- 1/2
- 次のページ