総務省接待問題が贈収賄事件に? カギを握るのは......

2021年2月24日(水)12時00分
北島 純

強制捜査が行われるかどうかは国民次第

国家公務員の倫理規程違反は、違法性があるといっても、あくまでも公務員の内部的なルール違反という扱いだ。基本的に各省庁が自ら調査・懲戒手続きを行った上で、人事院の国家公務員倫理審査会が承認するという段取りが取られる。

しかし、万が一、供応接待が公務員の「職務に関して」行われた場合は、刑法上の贈収賄罪の疑義が生じる可能性がある。そうなったら東京地検特捜部の出番だ(ちなみに単純収賄罪は、単に職務に関して利益を供与されただけで成立する。「行政が歪められた」のなら、より悪質な加重収賄罪の問題となる)。

供応接待が、国家公務員倫理規程違反にとどまるのか、それとも刑法上の贈収賄罪を問われる事案になるかは、接待の額、回数、規模などの客観的態様に加えて、接待を受けていた官僚側と接待をする民間業者側の「主観的認識」がどうだったかも重要となる。

通常は、贈収賄が疑われるような「過剰な接待」に対する官僚の警戒意識は強い。利害関係者に絡め取られないようにする健全な警戒意識を持つ官僚が大半だろう。優秀な官僚は、危ない橋は渡らない。しかし、「最も優秀」な官僚は、石橋を叩く素振りを見せずに泰然として橋を渡り抜ける術に長けているとされる。

今回の接待事件では、いとも簡単にそうした官僚側の警戒心が反故にされ、結果として職務の公正に対する国民の信頼が裏切られた感がある。旧内務官僚の末裔たる総務官僚の矜持は、どこにいったのか。

対する業者側も、衛星系基幹放送事業者の認定、あるいはBS周波数帯域の再編要望等に関して接待を行っていたのか否か、その狙いが明らかにされなければならないだろう。

問われる菅政権のインテグリティ

現行刑法の「贈収賄罪」の基本的骨格は、1941年(昭和16年)、国家総動員体制下で「官民癒着」が横行したことによる法改正が出発点だ。綱紀粛正を求める声がわき起こり、近衛文麿内閣は処罰範囲の拡大と厳罰化に踏み切った。

それから80年。今回のコロナ禍は未曾有の有事だとも言える。その中で発覚した総務官僚による「弛緩と放縦」に菅内閣はどう対処するのか。綱紀粛正を断行できるのか。

接待と金銭支払いの実態がどうだったかにとどまらず、今回の供応接待が職務権限行使と関連性があったのかが問われている。

今後、捜査が行われるか否かは、総務省側の説明と処分に対して国民がどの程度納得するか、世論の反応にもよるだろう。内閣として「インテグリティ(高潔さ)」を示せるか、国民は菅内閣の舵取りを見極めようとしている。

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